[鬼滅の刃]同僚の先輩兼恋人にとても恋慕されているんだが[宇髄天元]

『無理なこと言わないの』 ページ23

「卒業生、入場」



教頭の声と共に流れる入場曲と保護者や来賓席から送られる拍手。

晴れやかな顔をした三年生達が堂々と胸を張って入場して来る。

私も教員席に座って、今日をもってこの学園を卒業する彼らに拍手を送った。


今日は卒業式。

進路を決めた三年生が、それぞれの道に向かって歩き出す日。


初めて教える側から卒業生を見て、これこそが教員としてのやり甲斐だと感じる。


自分が教えていた子達を送り出す。

嬉しいような寂しいような少し複雑な気持ちだけれど、卒業証書を受け取る彼らの姿は、やはり誇らしいものだった。





「早いなぁ、卒業」

「ねー」



式と最後のホームルームを終えた卒業生達はみんな玄関前に出て保護者や友達、先生と写真を撮り始める。

笑顔の子、涙を流す子、表情は人それぞれだ。


私の所へ写真を撮ろうと来てくれた子達が、思い出に耽けるように校舎を見上げる。



「先生達ともお別れだもんね」

「あと一年でいいから、もう一回三年生やりたーい！」

『無理なこと言わないの』



でも、その気持ちは分かる。

卒業後の未来への期待は勿論あるけれど、卒業したくないと思う程高校生活が楽しかったのも事実なのだ。



『卒業してもみんながここの生徒だった事には変わりないんだから、いつでも遊びに来ていいのよ。先生達の異動もほぼないだろうし』

「じゃあ休みの日に遊びに来よ。A先生、絶対に異動しないでよ？」

『えぇ、約束。待ってるから』



写真を撮り終えた生徒達が少しずつ帰りだし、話していた子達も手を振りながら親の元へ戻って行った。


騒がしかったところから一転、みんな帰って静まり返った玄関前。



「行っちまったなー、アイツら」

『そうですね...って、何でそんなに疲れ切った顔してるんですか？』



中に戻ろうとした私の隣に後ろからやって来た宇髄さんが並ぶ。

宇髄さんの言葉に返答しながら彼を見上げると、何故かぐったりとしている。



「女子達に"先生のボタンください！"て言い寄られたんだよ。普通そういうのはモテる男子の制服から貰うもんだろ。こっちはスーツなんだから渡せるかっての」

『それはまた大変ですね』



なにはともあれ、無事に三年生を送り出せた事で、卒業生の準備で忙しかった仕事も一段落ついた。

今学期が終わるのも、あと一ヶ月だ。

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