『全部大好きです』 ページ19
翌朝。
あれから宇髄さんは夕食時にも来ず、夜中にアトリエから自室に戻っただけで、私がいなくなったリビングにすら行かなかった。
しかし、昨日の朝からしっかりとした食事を摂っていない上に、半日以上ずっと頭を使い続けていたのだ。
今日こそは空腹で来てくれるだろうという私の予想は当たり、もうすぐ朝食が出来上がるというタイミングで、宇髄さんがリビングに入って来た。
「...A」
気付いていない振りをして調理を続ける私の背中に、宇髄さんが気まずそうに私の名前を呼び掛ける。
たった半日聞いていないだけなのに、今こうやって名前を呼ばれた事がとてつもなく嬉しい。
私は何も気にしていない風に笑って後ろを振り返った。
『おはようございます、宇髄さん。もう少しで出来ますから、先に顔を洗って着替えてきてください』
「あ、あぁ...」
昨日のことについて私に何か言われると思っていたのか、宇髄さんは少し困惑気味に洗面所へ向かった。
作り終えた朝食を並べ終えたところで、支度を済ませた宇髄さんが戻って来る。
二人で手を合わせて食べ始めて直ぐに、宇髄さんは口を開いた。
「...昨日、ごめんな。イラついてたからってお前に当たっちまって」
『私の方こそ、仕事の邪魔をしてしまってすみませんでした』
「いや、Aは悪くねぇ。俺の事を考えて持ってきてくれたんだろ?その心遣いを無下にしたのは俺だ。本当に悪かった」
箸を置いて、宇髄さんは私に頭を下げた。
まさかそこまで深刻に考えられていたとは思っておらず、私は、慌てて宇髄さんに顔を上げさせた。
『宇髄さん、顔を上げてください。私は本当に気にしてませんから』
その言葉に宇髄さんは顔を上げるも、その表情はどこか納得がいっていなさそうだ
私もそっと箸を置き、改めて宇髄さんと向き合った。
『宇髄さん。宇髄さんの好きな所は沢山ありますが、私は絵と真剣に向き合っている宇髄さんが特に好きなんです。描いているところを見るのも、どんなデザインにしようか考えている姿も、全部大好きです』
そう言いながら、自分の顔に熱が集まるのを感じる。
"好き"だなんて本人に向かって言うことは中々ないし、こんな風に連呼した事すらないのだから、恥ずかしいのも当然だ。
『だから、私は昨日の事を何とも思っていません。ですから宇髄さんも気にしないでください』
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美緒ちゃん(プロフ) - 楽しかったぁぁぁぁぁあ!ありがとうございましたぁぁぁぁぁあ! (2022年7月23日 14時) (レス) @page39 id: 4f2d722dc2 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - りとさん» 分かります!あれですね、人の不幸は蜜の味ってやつですね(((特にすれ違いとかもう...いいぞもっとやれ!ってなりますね!((クズ (2022年2月5日 12時) (レス) id: f3367b760e (このIDを非表示/違反報告)
りと - 自分シリアス大好物なのでw(?)夢主ちゃんと宇髄さんが喧嘩するところは毎回にやにやしながら読んでますww(((最低 (2022年1月3日 2時) (レス) @page9 id: cb2121edf2 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - りとさん» いつも読んでいただきありがとうございます!大人な余裕を持った宇髄さんカッコイイですよね...子供っぽい時とのギャップが...!!確かに最近喧嘩してませんもんね、させましょう!(?) (2022年1月1日 21時) (レス) id: f3367b760e (このIDを非表示/違反報告)
りと - 宇髄さん余裕ぶってる態度とってんのいいな…かっこいい…。いつもムフフしながら(?)読ませてもらってます。応援してます!!無理せず頑張ってください!!宇髄さんと夢主ちゃん軽く喧嘩してほしいですw((((え? (2021年12月26日 2時) (レス) @page3 id: cb2121edf2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イリア | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.pnp/sakuramoti
作成日時:2021年12月18日 20時