『宇髄さん、宇髄さん...』 ページ12
『何で生徒達よりも丈夫なはずのあなたがかかるんですか...?』
「俺が聞きてぇ...」
真っ赤な顔でベットに横になっている宇髄さんを見下ろしながら、私は思わず溜息をついた。
手にある体温計には、思わず目を疑いたくなるような体温が表示されている。
そう、宇髄さんがインフルエンザにかかったのだ。
今までインフルエンザどころか風邪すらまともに引かなかったのに、クリスマス前にアトリエでほぼ睡眠を取らず引きこもっていた分のツケが回って来たのだろうか。
...それとも日頃の行いか。
「お前、ゲホッ...今失礼なこと考えたろっ...!」
『気のせいです』
まさか、子供達の看病ではなくこの人の看病に追われることになるとは。
今日が土曜日で本当に良かった。
『貰った薬飲まないといけないので、今からお粥作って来ますけど、食べられますか?』
「おー...」
いつもと違って力のない弱々しい声。
気配もいつもの宇髄さんではなくて、背を向ければ違う人に感じてしまう。
それこそ、宇髄さんが私の傍から消えてしまったような...
そんな馬鹿な考えを振り切る様に、私はブンブンと頭を振った。
『ちゃんと寝ていてくださいね』
そう一言伝えて、私はお粥を作りにリビングへ向かった。
病人の舌に合うように薄味にしたお粥を持って、そっと宇髄さんの部屋のドアを開ける。
いつもなら私の気配か足音に気付くのに、言われた通り静かに眠っていて起きる気配はない。
サイドテーブルにお粥を置いて、そっと宇髄さんに声をかける。
『宇髄さん、宇髄さん...』
「.....ん」
「お粥、持って来ましたよ。起きられますか」
「あぁ...ゲホッ!ゲホッ!」
目を冷ました宇髄さんの背中を支えて上半身を起こし、ベッドボードに寄りかからせる。
咳が酷く、目もぼんやりしている気がする。
私は少し考えて、木のスプーンでお粥を掬い、マスクを外して息を吹きかけ、少し冷ましてから宇髄さんの口へ持って行った。
それを見て、宇髄さんが小さく笑う。
「今日は派手なサービスしてくれんだな...」
『病人ですから、治るまでの特別ですよ』
「へーへー...」
小さく口を開けた宇髄さんは、お粥を含んでゆっくりと咀嚼する。
全部は食べ切れなかったけど、その後はちゃんと薬も飲んですぐに寝てしまった。
『...少しでも早く治りますように』
そう願いながら、私はいつもより温かい宇髄さんの手をそっと握った。
『.....今日だけですよ』→←『今日までで随分増えましたね』
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美緒ちゃん(プロフ) - 楽しかったぁぁぁぁぁあ!ありがとうございましたぁぁぁぁぁあ! (2022年7月23日 14時) (レス) @page39 id: 4f2d722dc2 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - りとさん» 分かります!あれですね、人の不幸は蜜の味ってやつですね(((特にすれ違いとかもう...いいぞもっとやれ!ってなりますね!((クズ (2022年2月5日 12時) (レス) id: f3367b760e (このIDを非表示/違反報告)
りと - 自分シリアス大好物なのでw(?)夢主ちゃんと宇髄さんが喧嘩するところは毎回にやにやしながら読んでますww(((最低 (2022年1月3日 2時) (レス) @page9 id: cb2121edf2 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - りとさん» いつも読んでいただきありがとうございます!大人な余裕を持った宇髄さんカッコイイですよね...子供っぽい時とのギャップが...!!確かに最近喧嘩してませんもんね、させましょう!(?) (2022年1月1日 21時) (レス) id: f3367b760e (このIDを非表示/違反報告)
りと - 宇髄さん余裕ぶってる態度とってんのいいな…かっこいい…。いつもムフフしながら(?)読ませてもらってます。応援してます!!無理せず頑張ってください!!宇髄さんと夢主ちゃん軽く喧嘩してほしいですw((((え? (2021年12月26日 2時) (レス) @page3 id: cb2121edf2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イリア | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.pnp/sakuramoti
作成日時:2021年12月18日 20時