『あの、危ないので...』 ページ2
あの後家に帰って来て、お風呂に入ってからすぐにベッドに入った。
家に着いた瞬間、体が忘れていた疲れがどっと押し寄せてきたのが一つと、何となく宇髄さんと二人でまったりするのは気恥ずかしかったからだ。
こちらに手の甲を見せるようにして天井に腕を伸ばせば、ベッドサイドランプの光を反射して、つい先程宇髄さんに嵌められた指輪がきらりと光る。
＿＿「来年の四月、絶対にお前に伝えるから...」
あんな返事をしておいて何だが、これはつまり、そういうことなのだろう。
これまで全く"結婚"というものを意識した事がなかったことも相まって、数時間前までは自分の指になかったこの特別なものの存在を認識する度、心が何とも言えない風にざわついてしまう。
関係が恋人から婚約者に変わっただけで、明日からの日常生活は今までと同じ。
それでも何となくその"婚約者"という言葉が擽ったくて、明日からどうやって宇髄さんと接すればいいのか分からない。
あの人ならいつも通りなのだろうが。
流石に付けながら寝るのは抵抗があるので、思考を止めることも含め、私は指輪を外してサイドボードに置き、脇下まで被っていた掛布団を肩まで引き上げて目を閉じた。
翌朝、カーテンを開けると街一面が真っ白に染まっていた。
私が寝る前に雪は降っていなかった筈だから、夜中に降って積もったのだろう。
今日は一段と冷えるし、暖かいスープでも作ろうか。
そう思い立った私は、朝食を作るためにキッチンへ入った。
「はよ〜」
『おはようございます』
匂いで目が覚めたのか、いつもは私が起こしに行くことが多い宇髄さんが欠伸をしながらリビングに入ってきた。
気配で分かってはいたものの小さく跳ねた心臓を誤魔化すように、平然を装って私も挨拶を返す。
宇髄さんはソファーに座らず、一直線にキッチンに来た。
私の背後に立ち、フライパンの取っ手を持っていた左手に自分の冷たい左手を重ねる。
そのまま指輪が嵌った薬指を撫でられて、これには流石に大きく肩を揺らしてしまう。
『あの、危ないので...』
「ちゃんと付けてくれてんだな、指輪。派手に嬉しい」
寝起きのせいか、いつもより吐息を多く含んだ声が私の耳を擽り、反射的に耳を庇う。
宇髄さんの薬指にも、私と同じ指輪が嵌められていた。
『...あと少しで出来ますから、向こうで待っててください』
「んー」
私の反応に満足したのか、宇髄さんは上機嫌でキッチンを出て行った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 425人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
美緒ちゃん(プロフ) - 楽しかったぁぁぁぁぁあ！ありがとうございましたぁぁぁぁぁあ！ (2022年7月23日 14時) (
レス) @page39 id: 4f2d722dc2 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - りとさん» 分かります！あれですね、人の不幸は蜜の味ってやつですね(((特にすれ違いとかもう...いいぞもっとやれ！ってなりますね！((クズ (2022年2月5日 12時) (レス) id: f3367b760e (このIDを非表示/違反報告)
りと - 自分シリアス大好物なのでw(？)夢主ちゃんと宇髄さんが喧嘩するところは毎回にやにやしながら読んでますww(((最低 (2022年1月3日 2時) (レス) @page9 id: cb2121edf2 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - りとさん» いつも読んでいただきありがとうございます！大人な余裕を持った宇髄さんカッコイイですよね...子供っぽい時とのギャップが...！！確かに最近喧嘩してませんもんね、させましょう！(？) (2022年1月1日 21時) (レス) id: f3367b760e (このIDを非表示/違反報告)
りと - 宇髄さん余裕ぶってる態度とってんのいいな…かっこいい…。いつもムフフしながら(？)読ませてもらってます。応援してます！！無理せず頑張ってください！！宇髄さんと夢主ちゃん軽く喧嘩してほしいですw((((え？ (2021年12月26日 2時) (レス) @page3 id: cb2121edf2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：イリア | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.pnp/sakuramoti
作成日時：2021年12月18日 20時
