【tkrv】自分の美の価値観が世の中と全然違う件2

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鶴蝶さんにそう礼を言われて、思わず私は首を傾げた。
すると鶴蝶さんは、どこか安心したような、それでいて遠くを見つめるような笑顔で「Aさんが来てから、マイキーすげえ楽しそうでさ。前より食事も摂るようになって。…ありがとう」と言った。

確かにマイキーさん、出会った頃よりも心なしが肉付きも顔色も良くなったように思う。隈はやっぱりべったりだが。鶴蝶さんの言葉に照れ臭くなって照れ隠しで曖昧に笑っていると、後ろにいた顔にワイルドな傷がついた方の男性が「いい雰囲気のところ申し訳ないんだが、そろそろいいか？」と話しかけられた。ウワ、声カッコよ。

鶴蝶さんはそれに「！あ、悪ィ」と小さく声を上げ、少し横にずれると二人を私に紹介してくれた。
「幹部の明司と望月だ。コイツらは基本的に裏の仕事しかしねえから、Aさんは今まで会ったことなかったよな」
「明司武臣だ。梵天の相談役をやってる。宜しくな、嬢ちゃん」
「オレは望月莞爾だ。鶴蝶の紹介の通り、基本“ソッチ”の仕事しかしねえから、会うことは少ねえかも知んねえが…宜しくな」
「ハイ！あ、もしかしたら鶴蝶さんからお聞きしているかもしれませんが…九井さんの補佐をやらせていただいている、AAです。今後とも宜しくお願いいたします」

自然な大人の色気を感じさせる傷のある男性は明司さん、スーツの上からでもわかる高身長ムキムキダンディーなお髭の男性は、望月さんというらしい。第一印象は大事なので笑顔で自己紹介をし返すと、「聞いてた通りホントに大丈夫なんだな」と望月さんが呟く。

一瞬何のことか忘れて瞬きをパチパチしたら、明司さんがブハ！と吹き出した。それでやっと私は「あ！顔のことかそういやここ美醜逆転の世界だったわ」と思い出したのだった。最近テレビも見ずに九井さんやマイキーさん、灰谷さん達と接していたから、またもすっかり忘れていた。

「ハハ、面白え嬢ちゃんだな。しかもここが梵天だって分かった上で逃げなかったんだから、肝が座ってるよ」

そう言いながら目の下に小さなシワを作って明司さんはカッコよく笑う。
それに私は「まあ皆さんのおかげで、楽しいことばかりですから」と笑い返すと、明司さんはキョトンと目を丸くしたあと、カカ、と喉で笑って大きな手で私の頭を撫でた。

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