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夜中にAが傷だらけで倒れたと硝子から電話で聞いた。
それを聞いた時、理解ができなかった。
いや、理解したくなかった。
だけど兎に角走った。
寮の階段を降りて、外に出て、医務室まで走った。
最近夜が涼しくなったと悟と話してた筈なのに、息が上がって身体が熱くなる。
変な汗も出てきて、嫌な事しか考えられなくなった。
もしAが居なくなったら私は___ッ!
嫌だ嫌だっ!、
考えたくない
そんな自分の思考を否定して、ただ走る事しかできなかった。
私は医務室の扉の前に着いても、その扉を開けることができなかった。
手が震えているのが分かる。
現実逃避するように、
あ、私は今怖いんだ。と客観的に見る。
大丈夫。
きっと大丈夫だから。
自分にそう言い聞かせて扉を開けた。
「A…」
部屋の奥の方に硝子の後ろ姿が見えた。
ゆっくりと私は歩き始める。
次第にAの顔が見えた。
その顔は海の帰りで見た寝顔と同じで、すやすやと寝息をたてていた。
それを見て私は少しほっとした。
生きてる。
それだけでただ、今は安堵できる。
私に気付いた硝子は症状について話してくれた。
Aの事を電話で聞いた時、硝子が既に手当てを終わらせた後で、意識不明の重体だと聞いていた。
Aは特級呪霊を身体に封印して、その時にできた傷から大量出血と呪力の使い過ぎで、少しでも遅かったら危なかったらしい。
傷は内側から破裂した様に切れていたらしく、その傷は反転術式で塞ぐことができたが、傷跡が残ってしまうと言っていた。
硝子は泣きそうな顔をして、ごめん。と、Aの頭を優しく撫でる。
それに、Aが何時起きるか分からないとのこと。
身体に過度な負担がかかり過ぎた為、起きた後に後遺症が残る可能性もある。
最悪、二度と起きない。なんて恐ろしい事も考えられるくらい重症だと聞いた。
私が何も言えずにいると、硝子は立ち上がり、
「今回の傷、報告しないといけないから席外す」
と言って扉へ歩いて行った。
「嗚呼、」
私は曖昧な返事をする。
生きてると思ったら、今度は目覚めるか分からない?
弱り目に祟り目とはこの事を言うのだろう。
現実はそう簡単に思い通りにならない。
私は自分の無力さに酷く痛感した。
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干し柿(プロフ) - しろりんさん» ありがとうございます😆過保護夏油サンも良いナァと思っちゃいました!心配性なオカンになってほしい。『愛してる』の真相はいかに…! (9月3日 15時) (レス) id: 429602f435 (このIDを非表示/違反報告)
しろりん(プロフ) - 私もこのお話…気に入ってます!夢主ちゃんが無事に起きたら…夏油くん…すごく夢主ちゃんに過保護になりそう…どっちから『愛してる』って…言うのかな…? (9月1日 23時) (レス) id: 2a6843f9ca (このIDを非表示/違反報告)
干し柿(プロフ) - 香恋さん» 私の好物シリアス展開です!早くイチャイチャ書きたいのですが、長引きそうで自分でも怖いです(--;)💦続編でたっぷりイチャつく予定ですのでもうしばらくお待ちください!☺️ (8月30日 21時) (レス) id: 429602f435 (このIDを非表示/違反報告)
香恋 - 夢主ちゃん…( ; ; )少し前からシリアス展開で、まさかの目を覚まさないとは!!夏油さんが切な過ぎて…早く目を覚ましてイチャコラください🙏 (8月30日 14時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
干し柿(プロフ) - りこさん» ありがとうございます😊やっと想いが伝わる…♡続編からバカップル誕生かもです!✌️ (8月28日 20時) (レス) id: 429602f435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:干し柿 | 作成日時:2023年5月28日 21時