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Lou side
「そうは言ってません。レオナ先輩だって、残してきた寮生たちが心配なんじゃないですか?サバナクローには副寮長がいない。今頃、リーダーのレオナ先輩を失った寮生たちはさぞ慌てているはず」
「んなこと俺が知るかよ。勝手にやるだろうさ」
「知るかよって、無責任な……ん?」
サバナクローはここ最近になって、副寮長制度を廃止した。寮内をまとめあげる唯一のレオナが不在の今、あの場所をまとめているのは多分ラギー辺りだろうけど……混乱状態にはきっと変わりない。
レオナの勝手な言葉にジャミルが一言入れようとすると、ずっと吹いていた冷気の傾きが変わった。
「この風……今までは足元から吹き上げる冷気しか感じなかったが……」
「ああ。少し前から横風が吹いてる」
「ということは、どこか吹き抜けてる場所があるな」
「あっ!あそこ、階段の少し先に、細い横道があります」
俺たちの目線の先にはかなり細い一本道。ジャックのような体格のいい人間は、絶対に通れない。
しかしそんな狭い道だからこそ、用心するべきものだ。
「暗くて中が見えない。身を隠すにはうってつけの場所だ。凍結から放たれたファントムが潜んでる可能性があるな」
「下がっていてください。俺たちが行って、中の様子をうかがってきます。ルウ、行くぞ」
「は?何言ってんだテメェ」
「え?」
俺を誘いながら、ジャミルは率先して先に行こうとする。しかしそんな彼をレオナは意味がわからない、という風に返す。
「レオナ先輩は夕焼けの草原の第2王子であり、寮長。となれば、当然俺が行くべきでしょう?いざという時のため、後ろにもルウをつけた方が確実。それに、俺のほうが身軽ですし。……ああ、決して先輩の足が遅いと言っているわけではありません」
「……………………」
「心配してるんですよ。あなたに何かあれば、俺では責任を負えませんから……」
「ハッ!心配?責任だと?この俺に……待て」
従者らしいといえばらしいが、レオナからすると完全に擁護されているとしか思えないジャミルの発言。それに反対しようとするが、レオナはあの細い一本道の方を鋭く睨む。
「キキッ……キキキッ!!」
小さな足音と物音。そしていやに甲高い声を、俺たちは捉えた。
「遅かったな。何か近づいてきやがる」
「声からして小さい……が、油断は禁物だな」
「案の定だ……こうなったら、迎え撃つ!」
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作者名:紅葉 | 作成日時:2023年4月21日 21時