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「……『タルタロス』に収容されたファントムの凍結が全て溶けきるまで、あとどれぐらいだ？」
「ろ、6時間を切っています」
「その間に外部との通信が復旧し、救援がくる見通しは？」
「「「……………………………………」」」
レオナ先輩の問いかけに、誰も答えない。無言を貫く一同に私たちは、彼らの答えを察した。
「救援は望み薄、本部に詰めてるのは非力な研究員が大半。頼みの綱のカローン用パワードアーマーも、魔導デバイスも、オルトに乗っ取られて動かせねえ。
で、もうどうしようもないから『みんなで震えながら奇跡が起きるようにお祈りしましょう』って？冗談じゃないぜ」
「確かにボクたちはまだ魔法士免許を持たない学生です。しかし、重大事案発生時においての初動処置については学園で訓練を受けています」
「そして……被検体として連行された俺たちは全員、オーバーブロット経験者だ」
「たしかオーバーブロットとは、“魔力保有量が多く、実力ある魔法士しか陥らない稀な現象”……でしたよね？それはつまり、僕たちが非常に有能な魔法士であることの証明だ。そうでしょう？『S.T.Y.X.』の皆さん」
「そ、それは……！」
堂々と言えるもんじゃないけどね、オーバーブロットって。でも今の状況じゃ、ゲームでいうバフ効果ってやつかな？
実際ここにいるのは、我がナイトレイブンカレッジ屈指の魔法士たち。正直、負けるビジョンは見えない。
「私は『やれるだけのことはやった』と言うためにここまでやってきた。最悪の事態を回避するために、私たちにはまだやれることがあるはずだ」
「僕も、覚悟はできてます！」
「正直、あの引きこもりには言いたいことが沢山あるんだ。勝手にこっちを亡き者にされたくねえ」
「俺も、好きになったこの世界を壊したりしたくない」
皆、気持ちは固まっている。やることは分かっている。
＿＿それは、私とて例外ではない。
「私も、自分勝手に世界をリセットなんて許せません！それに相棒を返してもらわなくちゃ」
足でまといなんかで、終わりたくない。
グリムに会えないまま、終わりたくない。
世界を、終わらせたりしない。
「じゃあ善は急げね。
行きましょう＿＿『タルタロス』へ！」
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作者名：紅葉 | 作成日時：2023年4月2日 9時
