画策レスキュー! ページ17
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ルーク先輩の言葉を聞いた職員は、慌てた様子で私たちを止める。
「そんな!危険だ!」
「百も承知さ。しかし、そこには我らの愛する学友たちがいる。彼らを置いて、私たちだけ脱出するわけにはいかない。大丈夫。私たちはナイトレイブンカレッジで緊急事態発生時の対応訓練を受けているからね」
「大切な人が、相棒が、この中で危険な目に遭っているかもしれない……そんな人たちを見捨てる、薄情者に私たちはなりたくありません」
イデア先輩やオルトくんの話では、検査中みんなに害が及ぶことは無かった。
しかし……この島では、今誰かがオーバーブロットしている。私が何度もそれを経験しているように、容易に収められるものではない。いくらみんながすごい魔法士だからといって、完璧に安心できるはずがない。
「そうか……。わかったよ。では、よかったらこれを」
私たちの覚悟を受け取ったのか、職員は渋々頷いた。
すると彼はポケットから白いカードを取りだした。『S.T.Y.X.』の船を漕いでいるマークがついている。
「これは……IDカード?」
「ああ。通常のIDカードが持つアクセス権限では、管制室がある中央エリアには入れない。だが、このカードなら入ることができる。
混乱しているであろう本部内で、どれだけ役に立つかはわからないが……。魔法が使えない私より、君たちのほうが有効に活用してくれるだろう」
「でも、おじさんが脱出するためにも必要なんじゃない……かな?」
「私なら大丈夫。生まれも育ちもこの島の中だ。どうとでもなる」
……この人だって、不安で仕方ないだろうに。一刻も早く、この島から離れたいだろうに。
自分の身を按じることよりも、私たちのことを思ってくれている。有難い話だ。
「お心遣い、感謝します」
「こちらこそありがとう。どうか気を付けて」
職員はこちらを一瞥した後、私たちが出てきた研修施設の方へ走っていった。
「……さあ、行こうか。我らが女王の御前へ!」
「はい!」
ここからは未知の場所。でも、早くみんなと合流しないと。
ルーク先輩に続き、私とエペルも『S.T.Y.X.』本部へと足を入れた。
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「ここか……。海の中に作るなんて、面倒なことをしたもんだな、シュラウドも」
青年はため息をつくと、乗りこなす箒を下降し出す。
風に吹かれた黒いマフラーは、深海を泳ぐ魚の影に見えた。
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作者名:紅葉 | 作成日時:2023年4月2日 9時