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No side
「誰がなんのためにグリム氏にこんな複雑な魔術を施したのかわからないけど……現状、グリム氏に施されているブロット耐性が“呪い”なのか“祝福”なのかもわからない」
「というか……そのふたつは呼び名が違うだけで、『相手になんらかの魔術を付与する』という点で同種の魔術だもんね。違うのは、術者の感情がプラスなのかマイナスなのかだけだ」
「そう。僕たちの一族が代々受け継ぐ、溜まったそばからブロットを焼却する呪いだって……人によっては一生暴走しなくて済むありがたい“祝福”だけど……
きっと僕らのご先祖さまからすれば、二度と謀反をおこさないよう施された“呪い”だ」
「…………………………………」
一族皆が持つ、この青く燃える炎の髪。長ったらしいソレを忌々しそうに見つめるイデアに、オルトはそっと尋ねた。
「シュラウド家が代々『嘆きの島の番人』をするように命じられた原因は……。初代当主が『原初のファントム』と呼ばれるタイタンズを引き連れて、ジュピター家に謀反を起こしたから……だったよね?」
「そう。で、結局ジュピターにコテンパンに負けて……罰としてファントムを封じ込めるための牢獄『タルタロス』と、ファントムの墓場『冥府』の管理を押し付けられた。
まったく……ジュピターを倒して一族のトップになろうだなんて、信じられない。勝率低いのは分かってただろうに。本当に拙者の祖先か?おかげで子孫一同全員が大迷惑。夢も希望もないとはこのことだ」
当時の者たちの勝手な行動で、今後生まれる子孫たちはやりたくもない仕事を押し付けられている。頭が悪かったのか、家の歴史にはため息をつくばかりだ。
「歴代当主はこの世からファントムがいなくなれば、この辛気臭い場所からも番人の役目からも解放されると考えてせっせとブロットの研究に勤しんできたわけですが……ま、ご覧のようにどうにもならず、イマココ……ですわ。
僕も昔は『全人類に僕らと同じ呪いをかければ、全て解決だ!』とか考えて、自分にかかった呪いの解析とかしてみたけど……解析しはじめて3分で気づいた。体内のブロットを焼却し続ける呪いが、ブロットがないときになにを燃やすのか」
「ブロットの素である魔力……だね」
「そう!」
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作者名:紅葉 | 作成日時:2023年3月18日 11時