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No side
「……マレウスよ。上を見てみるがよい」
「……天井にすごい大穴があいているな」
「違う、その先じゃ。天空を見上げてみよ」
マレウスは大穴のその先を見つめた。
真っ暗な夜空に小さな星々が輝いている。そして大穴をちょうど半分にするように、大きな輝きを放つ星たちが整列している。
「この上なく美しく、星が並んでおるじゃろう。ああして星が一直線に並ぶのは古来より吉兆とされ、今日は18年ぶりに……いや100年だったかな……やっぱ300年ぶりじゃったかも?ともかく、ひさしぶりのことじゃ」
「ふっ……。つまり人の子らは何度も見られるものではない、ということだな?」
物忘れをしたリリアに、マレウスは少し口元を綻ばせる。
「うむ。じゃが……お主は長い生の中で、何度もこれと同じ星の並びを見ることになる」
「………………」
「次に星々が整列するまでには、きっと世界は大きく変化を遂げているはずじゃ。お主はそれを受け入れていかねばならぬ。わかるか?」
「分かっているさ。だからこそ、この学園に入学した」
既に膨大な力を持つマレウスが、わざわざこの学園に入ったのは、ただ魔法を学ぶためだけではない。そもそも目的がそれだけなら、城内で十分だろう。
「よいかマレウス。今日この場所で感じた痛みを決して忘れるな。その痛みは、お主がこの先長い刻ときを生きていくうえで失くしてはならぬものじゃ」
「…………心に留めておこう」
「よい子じゃ。さあ、今はみなが無事に日常へ戻れるよう、あの星に祈ろう」
「そうだな、リリア」
頷いたマレウスを見たリリアは、そっと天空の星を見上げ……小さく言った。
「………………。わしも幾度となくあの星に願いをかけてきたが……
これが最後かもしれん」
「…………え?」
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作者名:紅葉 | 作成日時:2023年3月18日 11時