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グリムの声に気がついたのか、その少年は私達の方を見て話しかけてきた。
「あなたは確かマジフト大会の時に……」
「ああ、マジフト大会前に怪我をした時少し話をしたな。君たちは確か……ユウとグリム、だったかな？」
「物覚えがいいヤツなんだゾ！お前の名前は、えぇっと……」
「ジャミルだ。ジャミル・バイパー。スカラビアの副寮長をしてる。俺は昔から人の顔と名前を覚えるのは得意でね。それに、君らは入学以来とにかく目立つからな」
「えっ、そ、そうか？にゃっはっは！オレ様たちも名前が売れたもんなんだゾ！！」
「ははっ、それほどでもーー」
自分でもビックリするぐらいの棒読みで答えた。グリムやらブラザーたちやらの問題行動のせいで、悪名の方が高い気がするからね……。
「ところで……君たちは冬休みなのに何故学園に？」
「オレ様たちには帰れる実家なんかねぇからな。それに学園長から暖炉の火の番という大役を任されてるんだゾ。オレ様、真面目で有能だからな〜！学園長に頼られるのも仕方ねぇことなんだゾ！」
「そんな大層なものじゃないです。いい感じに丸められて、雑用押し付けられただけですから」
よくよく思い出すとスマホ貰って有頂天状態だったからなぁ。もっとちゃんと学園長とお話しとけばよかった。
「へぇ………そうなのか。学園長にね……。
……それは、使えるかもしれないな」
「？」
「ン？なんか言ったか？」
「あの学園長に認められるなんて君たちはすごいな、と」
ジャミル先輩、最後の方小声で何か言ってたけど、何だったんだろ……？よく聞こえなかった。
「お話中すみません、副寮長。野菜の下準備が終わったのですが……」
「ああ、今行く」
「このスープ、美味そうだけど嗅いだことない匂いがするんだゾ」
グツグツ煮込まれているスープの鍋にグリムは鼻を近づける。たしかにこっちの世界でも、初めての匂いかも。
「それは熱砂の国の伝統的な家庭料理で………。……ああ、そうだ。ここで出会ったのもなにかの縁。良ければ君たちも食べていかないか？」
「にゃにっ！いいのか！？」
「コラッ、そんなの悪いでしょ」
「大丈夫。料理の完成まであと少しだ。君たちも手伝ってくれ」
ジャミル先輩がそう言うと、グリムはキラッキラの眼差しをこっちに向けてきた。
やめろ……！私はソレには弱いんだよっ！！
「……………あんまり欲張っちゃダメだからね」
「ヤッホーーイ！」
まあ、元よりグリムは食べ物目当てで来たんだもんね。こんなチャンス逃さないか。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2022年9月5日 19時
