抹消パスト! ページ7
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「……ハッ……」
「あ、目ぇ覚ました」
「意識の方は大丈夫ですかね?」
「アズール、この指は何本に見えますか?」
私も先程目を覚ましたばかりだが、アズール先輩はオーバーブロットの影響がまだ残っているかもしれない。
ジェイド先輩は手をパーにして、5本指を立てた。
「8……本?」
「うん。まだ気が動転しているようですね。でも、よかった。なんとかブロットの暴走が治まったようですね」
「……ったく、手こずらせやがって」
「いやいや、レオナさんはそれ言っちゃだめっしょ」
同じことを数週間絵にもやらかした貴方が言えませんね、ホント。
「僕は……一体、なにを?」
「魔法の使い過ぎでオーバーブロットしてしまったんです。覚えていませんか?」
「僕に力をくださいよぉ〜〜って泣きながらみんなの魔法吸い上げてさぁ。ちょ〜ダサかった。ちょっとゲンメツ」
「そ、そんな……僕が暴走するなんて……。信じられない……」
「ま、コツコツ集めてきたモンを台無しにされたらそりゃ怒るッスよね。オレだって、ずっと貯めてる貯金箱を他人に割られたら絶対許さないと思うし」
「ラギー先輩のそれとは違うと思います」
割られても中のお金が消えることはないしね。アズール先輩の場合、全部誰かさんが砂にしちゃったし。
まあ、お願いしたのは私ですけど!!!!
「でも、悪徳商法はダメなんだゾ。反省しろ」
「その前に、お前らは他人の作った対策ノートで楽しようとしたことを反省しろ!」
ジャックに正論をぶちかまされたグリムはショボンとなって、私の足にすりついた。
アズール先輩はというと、グリムの一言が刺さったのか、顔を下げて震えていた。
「…でも凄かったですよ、あの対策ノート。グリムに80点もの高得点を取らせるなんて」
「……え?」
「確かに。だってアンタの作ったテスト対策ノート見て一夜漬けしただけで、90点以上取れちゃったもん」
「ああ。まさに虎の巻、だったな」
「100年分のテスト出題傾向をてめーの力で分析して作ったもんだと、学園長から聞いた。あんたの汚いやり口は認められねぇが……その根性だけは認めてやってもいいぜ」
思いもよらない私たちからの褒め言葉に顔を上げ、呆然となったアズール先輩だが、すぐに元の表情に戻った。
「…………。フン。そんな慰め、嬉しくもなんともありませんよ」
しかし彼の目元には雀の涙程度に、雫が溜まっていた。
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作者名:紅葉 | 作成日時:2022年8月29日 20時