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『まさか、もうバレてしまうなんてね』
『じゃあ、やっぱり?』
『ああ、そうさ。僕はついに完成させた。この魔力を込めた契約書。これにサインさえ取り付ければ、どんな能力でも相手から奪うことができる……その名も、『
今度は僕がこの魔法でアイツらを跪かせてやる。お前らの長所は、全部僕のものだ!!アハハ!!!アハハハ!!!』
「アズール先輩……」
なんという執念深さ。なんという粘り強さ。
自分を見下し、バカにしてきた彼らを見返すために、アズール先輩はここまで努力していたんだ。
【___僕は、1秒たりとも忘れたことはなかった】
【__僕をバカにしてたヤツら】
【__いじめたヤツらの姿を】
【__そして時間をかけて観察してきた】
【__ヤツらの弱み、悩み……僕は、全部握っている!】
全ては復讐のため。
長い年月で、いじめっ子たちは既に彼のことを忘れているだろう。それでもアズール先輩の心の傷は時間が解決してくれるほど、小さくはなかった。
【___弱みを握れば、早く泳げるヤツの尾びれが奪える】
【__悩みを握れば、歌が上手いヤツの歌声も奪える】
【__この契約書があれば、僕は無敵だ!】
たった一つのサインでその人を縛ることが出来る。たしかに一度だけ聞けば、完璧な魔法だ。でも、その契約書にも弱点はあった。私達が見つけてしまった。
それはもう、“無敵”の契約書なんかじゃない。
【___僕はもうグズでノロマなひとりぼっちのタコじゃない】
【__僕は、この力で全てを支配してやる】
【___僕を馬鹿にしたヤツらを、今度は僕が跪かせてやるんだ】
人から奪い、人を操る。
彼がとてつもない執着を表した裏には、自身の哀しい過去が原因だった。
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目の前がゆっくりと暗くなり、気づけば周りはあの空間へと変貌していた。
「今度はこっちか……」
またもや、何かに誘われるように暗い空間を歩く。ここは広いのか、足音一つ一つがやけに響く。
「あっ…」
小さくうずくまり、体操座りをするアズール先輩。あの堂々とした面影はひとつも見えなかった。
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作者名:紅葉 | 作成日時:2022年8月29日 20時