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着いたのは白で統一された、教会のような建物。当時の私はまだ漢字が読めなかったため、その建物の字は読み取れなかったが、今ではそこが『孤児院』だったと分かる。

(お父さんとお母さん、何話してるんだろう?)

2人が建物から出てきた、1人の男性と話をしている。『書類』とか『親権』などと難しい単語が飛び交った。

「優羽、お母さん達大事なお話があるから、1人でも待てるかしら?」

「うん!優羽ね、お留守番できるよ!」

父は男性と一緒に建物の中へと入っていき、母も私に一言言って、中へと進んだ。その時一瞬だけ母は、悲しげな顔をしていた。
2人がいないその間、私は広い庭で一人時間を潰していた。


___
__
_


(お父さん達、遅いな……)

かれこれ1時間は待っているような気がする。日もほとんど落ち、夕暮れを伝えるカラスの声が響く。

「!!お父さん!」

ザッと地面を踏む音が聞こえた。建物の中からどこか険しい顔をしたお父さんが出てきた。
しかし当時の私は彼と再会できたことに喜び、そこまで見ていなかった。

「お父さん、さっき優羽ね……」

「……な」

「え?」

「うるせえな。ガキが喚くな」

ヒュッと喉の音がした。いつものお父さんの声じゃない。

私はその場を後ずさりして、父から離れた。彼は私が離れたことを確認して建物の外を目指す。

「急げ」

父がそう言うと、後ろからもう1つの足音が聞こえた。父より軽い音だ。

「お母さん……」

母は顔を伏せており、表情は見えなかった。ただひたすら、父のいるところへと足を進める。
私の方は一切向かずに。

「お、お父さん…!お母さん……っ!」

呼びかけても2人は足を止めるどころか、だんだんと早足になる。


どうしてこっちを見てくれないの?

どうしてあんな怖いこと言ったの?


それが聞きたくて、必死に呼んだ。
すると建物の門の前で父がピタリと足を止めた。私が希望をもった、すぐ後だった。

「うるせえっつてんだろ。目障りだ」

「えっ……?」

「こっちに来るな。

___お前はもう、うちの子じゃない」


その一言に呆然とした。頭が真っ白になり、呼吸もしづらくなった。

気がつけば父の車はなくなっており、2人の姿も消えていた。

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作者名:紅葉 | 作成日時:2022年8月29日 20時

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