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「記憶を消されたって……」
「その悪魔を倒した後、2人は自分達を見た奴ら…正確にはその悪魔と闘った時のことを記憶から抹消した。だから誰も知らない、覚えていないっつーことだ」
『天の闘い』を見た者はその記憶を消された。しかしそうなると、別の疑問が浮き上がってくる。
「だったらなんで学園長やレオナはそのことを知ってるんだ?」
「歴史書にも残されていないことをどうやって……」
「たった一人だけいたんです。『天の闘い』を見た後、2人に記憶を消されずに住んだ者が」
「その人が書いた本がこちらです」クロウリーは持っていた分厚い本の表紙を皆に見せた。本には題名がなく、表紙には大きく三日月の絵……そして著作者だけが載っていた。
「S.A?」
「これが『天の闘い』でも記憶を消されなかった人?」
「中にはなんて書いてあるんです?」
アズールがクロウリーから本を受け取り、中をパラパラと捲る。内容は彼が話したものとほとんど同じであり、それが詳しく書かれているだけだった。
『この世を滅ぼす悪魔と、この世を救う神との争い。私がこれを“天の闘い”だと思うようになったのは、それを見てすぐだった。』
あるページの一文にはそう書かれていた。『天の闘い』とはここから言われるようになったのだろう。
「学園長がこの本を持ってたから知ってたのは分かるんスけど、なんでレオナさんまで?」
「この本が作られたのはごく最近、作られてから5年も経っていない。更には発行された数は片手で数えられるだけの数。そのような貴重品、一般の人には手が届くわけがない」
「しかし王族のレオナさんが持っていてもおかしくない。発行部数が少ないから、この闘いを新たに知る人もひと握りだった……ということですか」
クロウリーがどうやって本を手に入れたかは謎だが、レオナは夕焼けの草原の王子。彼が持っていても、彼の家に希少な本があっても、それはおかしいことではないのだ。
「本の内容とさっきの砂……特徴が一致している。紛れもなく、さっきの魔法はこの『天の闘い』で勝利した2人のものだ」
「じゃあ、なんで小エビちゃんにそんな呪いがかけられたの?」
「それは本人の口から聞いた方が早いでしょう」
クロウリーがそう言った直後、掛け布団がモゾモゾと動いた。
「……ん……。あれ、私……」
目を擦りながらユウは体を起こした。
皆に泣きながら良かったと喜ばれる中、クロウリーは先程までのことをユウに話した。
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作者名:紅葉 | 作成日時:2022年8月29日 20時