愛され方を忘れた少女第八幕【ツイステ】 (ページ3)

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『ねえタコちゃん、そんな狭いタコ壺に引きこもって何してるの？』

するとどこかで聞いたことのあるような、ゆったりした喋り方の人魚がやって来た。
その隣にはゆったり人魚とそっくりの容姿を持つ人魚。

「えっ！？もしかしてリーチ兄弟！？」

3人はこの頃からの知り合いなの？幼馴染ってやつか！

『うるさいな。僕のことは放っておいてよ』

『すごい。どの貝殻にもびっしり呪文や魔法陣が書いてある。種族を変える魔法に、声を奪う魔法……。
君、その8本足でずっと魔導書の研究を？』

『勝手に触るなよ！墨を吐きつけられたいのか！
僕はもっと勉強して、海の魔女のような力を身につけてやるんだからな！だから、邪魔するな！あっちへ行けったら！』

いじめられたことが原因で周りにあまり心を開かず、警戒心が強くなっていく、アズール先輩。自分の勉強の成果を他の人に触られたくないのか、しっしと2人を追い払った。

『ジェイド、あのタコ面白いね』

『ええ、フロイド。興味深いですね』

リーチ兄弟の好奇心は年相応ながらに旺盛だった。いや、アズール先輩だからこそ、彼らは彼に心惹かれたのだろうか。

＿＿＿
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【＿＿＿そして、ひたすら勉強を続けて数年が過ぎ……】

小さな稚魚の頃から売って代わり、3人は中学生になった。フロイド先輩とジェイド先輩が世間話のように、目の前で本を読むアズール先輩に話す。

『となりのクラスのデブ人魚が急に激やせして彼女が出来たんだってー』

『かわりに、彼自慢のテノールが酷いしゃがれ声になったそうです』

『へぇ、そう』

『別のクラスのボサボサのクセ毛に悩んでいた人魚もサラサラで綺麗な金髪になったとか』

『代わりに、速く泳ぐための大きな尾びれが無くなった』

『ふぅん、なるほど』

何かを得た代わりに、何かを失った。そんな話を聞いたアズール先輩の顔は本に隠れて見えない。しかしそんな彼の心中を分かったかのように、2人は怪しく笑う。

『ねえ、アズール。ぜんぶ君の仕業なんでしょう？』

『……僕の？なぜ？』

『そんな強大な魔法、能天気な魚たちには到底使えません』

『タコちゃん、ずーっと魔法の勉強してたじゃん』

『……ふっ。ふふ、ふふふ！ははは！！そうですか』

楽しそうに笑い始めたアズール先輩は、本から顔を離した。そこには清々しいほどの笑顔を浮かべた、タコの人魚がいた。