無色の詩姫【イナオリ】第五章 (ページ28)

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〇電話ページ28

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監督の計らいでロッカールームまでマネージャー2人と共に一緒に来た詩音は無事に迷うことなくバスまで合流出来た。

宿舎で晩御飯を食べたあと、各自解散となったので詩音は自室へと戻った。

『……(中国戦の時と、同じ)』

ブー、ブー

音がした方向で彼女の携帯に着信が入っていた。

画面も見ずに携帯を手に取り、電話に応じる。

『はい、どなたでしょう』

《「ベルナルドだ」》

『ベルナルドさん？どうかいたしましたか？』

急に電話が来たと思えば今日の朝にあったフロイの兄、ベルナルドだったので警戒を解く詩音。

《「明日、オリオン本社に来てくれないか？」》

『………なぜですか』

オリオンの使徒では無い自分が、敵の本拠地に潜り込む絶好の機会でもある。が、それと同時に生じた疑問は当然のものだった。

このまま仲間にするなどと言われればそれは断るが、オリオンの本当の目的を探るのにはもってこいだろう。それに―――

“「我々ロシア代表は、オリオンを認めない」”

フロイのあの言葉の真意も定かではない。

《「君にオリオンを知って欲しくてね」》

『わたしに案内をして、使徒になれとでも？』

《「なってくれたらありがたいが、そんなことでは君は協力してくれないだろう？」》

『……』

《「ま、身構える必要はない。私は君をオリオンに引き入れるつもりはまだ(・・)ない」》

『……？』

違和感は感じたものの、何が引っかかったのかまでは判断しきれずに詩音は首を傾げる。が、相手の声色的に明日は本当に紹介だけをするようだ。なら、行っても問題はないだろう。

そう、判断した。

『わかりました』

《「よかった。明日、昼頃にそちらへ向かおう」》

『あの広場の噴水で待ち合わせましょう』

その方がみんなにバレた時に言い訳がしやすい。その意図を読んだらしいベルナルドは電話越しに頷いて電話を切った。