隔 離 病 棟 .

宝石病 ページ6

「Aさん。私ね、宝石病になってもよかったのかなって、今思ってるの」









一瞬、思考が停止した。

この病院に来てからというもの 患者さんは後悔と絶望の渦に呑み込まれているというのに。



その感情に自分もいつか呑み込まれてしまうのではないかと怯えている程に、だ。









ポジティブなのか、それともまた何か別な理由があるのかは聞いてから解る。









『そうなんですか…。でもどうして？』


「宝石って、綺麗でしょう？私がそんな綺麗なものを生み出してるって考えたら ちょっと周りに自慢できるかなぁって」









そう言うと くすくす とその可愛らしい顔で悪戯に微笑んだ。








続けて、




「私 今までどうしても、自分に自信が持てなくって。こんなこと 看護師さんに言うのもどうかと思うけど、小さい頃から色んな人にいじめらてね…」









まやさんは自分の生い立ちを語り始めた。

幼い頃から親に虐待を受けていたそう。


完璧とも言えるその容姿が仇となり、周りの女子達から恨みを買うようになってしまった。

故に、学校でもいじめられていたらしい。








虐待といじめのせいで 自分は汚い、醜い人間なんだと激しい思い込みをしていた。



















学校でも、家でも、生きる場所・休める場所が見つからないまま とうとう家出をした。





行き着き先は、祖母の家。








特に暴力が酷かった母。




母方の祖父母は何度も何度も母を説得し、これ以上自分の娘に手をあげないよう約束をさせた。
それなのに、にも関わらず 同じ過ちを幾度となく繰り返した。








なので家出した孫に同情し これからは自分達が面倒を見、育てようと決心したと 後から聞いたそう。









「だから、そんな私が少しでも役に立てるかなって病気にかかった時、わざと誘拐されるのも悪くないかなって思っちゃったの。」






おばあちゃんとおじいちゃんには悪いんだけどねと、俯きながら呟いた。









『よかった。まやさんが間違った選択をしなくて。ここの病院は少し変わってるかもしれない。気持ちを理解してくれる人がいないかもしれない。
でも、私がいますから！ それに、こんなこというのは、あれ…かもしれないですけど、まやさんは宝石病なんかにかからなくても、ずっとずっと、綺麗です』





自信満々に言ってやった。
貴女はとっても綺麗で 素敵な笑顔がチャームポイントの美しい女性です。と。

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