【佐久早聖臣】この病の名前は恋ではない

番外編 まだ知らぬ病　9 ページ48

とうとう体育祭。



玉入れだけ我慢、玉入れだけ我慢…と自分に言い聞かせてグラウンドへ。

皆が散乱した玉を拾っては投げ入れるが、俺はそんな汚いものは極力触りたくないので、あまり拾わずにいたら…





男子「ラスト！佐久早か白音入れろ！」

佐久早「…！」

白音「…、」





俺と女子の間に最後のひとつが落ちていた。

まじかよ…、早く拾ってくれ…と思いながらそちらを見ると、彼女と目が合う。



そしてその目は、『あなたがやって』と語っていた。





………同じこと考えてんのかよ…





しかし譲る気もないのでしばらく見ていたら、観念したように彼女が屈んだ。



そのときだった。





男子「…〜っ！なにやってんだよ！」

白音「わっ…」





1人の男子が彼女の前に来ては最後の玉を奪い取り投げた。



その時にぶつかって、バランスを崩す彼女。

そのまま地面に尻餅と手をつく。





佐久早「…おい、お前、」

男子「！ わ、悪い…！」

白音「あ、いえ………大丈夫です…」





…それには流石にそいつが悪いので、俺が見ると慌てて謝りながら彼女へ手を差し出した。

そして、彼女はその手を取ろうとして…引っ込めた。



…うん、俺もその手は取りたくない。





なんて、何故か共感したらその引っ込めた手を彼が掴んだ。





男子「いいから！」

白音「…っ！！」





＿＿＿と思ったら、思い切り強く腕を引いて振り払う彼女。





それに、驚いて俺と男子は呆然と見ていた。



すぐにそれが"拒絶"だとわかったからだ。





白音「………すいません…私の手に砂がついてたのでつい…もう終わったし、手洗って砂落としてきますね」





そう言って下手くそに笑いを浮かべると、ジャージについた土埃軽く払って、校舎内へと逃げていった。

…それが何故か気がかりで、俺は彼女のあとを追う。



校舎内を探すと、彼女は誰もいない洗面所で手を洗い終わったのか、静かに濡れた手のひらを見ていた。





佐久早「………大丈夫？」

白音「……、」





…声をかけるつもりはなかった。





けど、気がついたら声が出ていた。

目を見開いてこちらを見る彼女。



そして、ふと思い出すのは、見たことのある同じ光景…





＿＿＿あ、こいつ…





教室掃除のあと手を洗ってた女子だ。





＊

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