【佐久早聖臣】この病の名前は恋ではない

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佐久早「…で、なんか思い当たることあんの？」

A「いえ、全く…」





話しながら彼と一緒に歩くいつもの帰路。

再度聞かれるも、自分でもわからないので答えようもなく。



…これ、ほんとにただ没頭してただけでは？

と思い始めて、横目で彼の顔を見た瞬間。



ふとした言葉が過ぎった。





A「………、」

佐久早「………何、人の顔じっと見て」

A「…あ、いえ、なんでも…」

佐久早「…言いなよ」

A「………そんな大したことじゃないので」

佐久早「じゃあ言えばいいだろ…」

A「………」





こういうときは食い下がってくる佐久早くん。

…気になることは聞かないとすまない性分のようで。





………でも、これを言う訳には…



と、そこで耐久戦を先読みされたのか手首を掴まれ、進んでいた足が止まる。





佐久早「…そんなに俺には言えないわけ？」

A「いや、その…佐久早くんが気にするほどのことじゃないので…」

佐久早「それならいいから、言えって」

A「……、っ…あぁーもうっ！わかりました、言います言います！」





渋るにつれて、段々と眉にシワが寄る佐久早くん。

それ見て後にまた彼と面倒なことにはなりたくない私は、自棄(ヤケ)になって叫ぶように吐く。





A「佐久早くんが変な顔してたって言うから…！その…気になったんです、よ…」

佐久早「………は、」





何故だが無性にくる気恥ずかしさに、私はそっぽを向いてしまう。

すると、目の前からは間の抜けた返事が遅れて来たと思ったら、今度は鼻で笑う音が耳に入る。





佐久早「…そんなことかよ」





「…だから言ったじゃないですか」と言おうとして、私はその表情に言葉を奪われた。

素っ気ない言葉とは裏腹に、目を細め、優しい眼差しをしていた。





＿＿あ、これ…





A「笑って、る…」

佐久早「！ …笑ってない、」





慌ててマスク越しだというのに、さらに手で口元を隠す仕草に、今度は私が笑う。





＿＿＿ああ、変なのはこの高鳴る胸かもしれない。





A「…じゃあマスク下げてください」

佐久早「やだ」

A「なんでですか、本当に笑ってないなら見せてください」

佐久早「うるさい」





手を離され、掴んでいた手を制服のポケットに突っ込むとずんずんと1人歩き出す彼。

それを私は早足で追った。





…あれがマスクなしだったら、恋というものに落ちていたり…とかね。





＊

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