１５話 ページ16
『はぁ！？』
反射的に背筋が伸び、空のゼリーパッケージを握る手に力がこもる。
思わず可愛げのない返事をしてしまったが、想定内だったのか向こうは少しも驚く事なく、むしろ目の中の飴色が満足そうに深まっていった。
…あ、これ、やられた。
「なんてね。冗談だよ」
パッと両手を顔の横に上げ、勝利したという顔でひらひらと振る研磨。そうだ、こいつはこういうヤツだ。珍しく世話を焼いてくれたから少し油断していた。
『うわ、やられた！病人に少しは容赦しようよ！！』
いつものように、何てことない調子でそう返す。顔だって、手のひらだって、本当は燃えるように熱い。
なんだ、冗談なのか。心の中で残念に思う自分は存在していて。いつまでも見ない振りをしているのはしんどくなってきた。
やっぱ、私は研磨が＿＿＿
「飲まないの？」
『ううん飲む、すっごい飲む』
「いやAの年だと２錠だから」
あまりの衝撃発言に考え込んでしまっていたが、目の前に現れた手によって停止された。
『おっけー、じゃあ一粒…』
言い出した手前後には引けない。覚悟を決めて水とともに飲み込む。
ゴク、と一際大きく喉が鳴ったのが分かる。意識していないとつっかえてしまいそうで抵抗があったが、案外すんなりと下っていった。
『…飲めた』
「そりゃそうだって。はい二粒目」
飲めるように作られてるからと言う研磨は、自分が飲めるからか厳しい。でも、ちゃんと飲み込めるか口元や喉元を見ているのは視線で分かるからやっぱり優しい。
『はーーっ、飲めた…
よし、ほめたたえろください』
「潔いなあ」
今まで飲めなかったのだから、大きな進歩だ。もはや恥などない。
「じゃあそんなAさんに質問です」
『？ はいはい』
斜め上の返答をされ、頭の上にクエスチョンマークが浮かんでしまったが続きを促す。
研磨は小さく息を吸うと改めてこちらに視点を据え、先程の表情になる。少し強ばっているようにも見えるが、気のせいだろうか。
「口移しのこと言った時、なに考えてたの？」
『なッ…！？』
顔赤かった気、したんだけど。止めをさしに来る研磨の声もどこか遠く、完全に不意打ちな質問に再度熱を集めることしかできない。
なに考えてたのって、なにって、どういうこと。
『…別に、
いつもの意地悪だなぁって、思ってただけ』
「ふぅん」
意地の悪い金髪ネコは、読めない表情で静かにこちらを見つめていた。
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ねぎ - Rioさん» コメントありがとうございます！嬉しいです、励みになります〜!! (2022年9月27日 23時) (
レス) id: 124a1bc937 (このIDを非表示/違反報告)
Rio - 今晩、凄く素敵な小説を見てびっくりしました！更新、楽しみにしてます！(／^_^) ( 初対面なのにゴメンナサイ！) (2022年9月24日 19時) (レス) @page16 id: 9824f121c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねぎ＋ | 作成日時：2022年7月7日 21時
