たとえ今日という日を忘れても ―ソードアート・オンライン― (ページ17)

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アルゲードのホームに帰ってから、時間が経つにつれて俺の胸の奥を撫でるひやりとした嫌な感覚は次第に大きくなっていった。
何もわからないのに、おかしい、おかしいと頭が言い続けていた。

無気力、ふらついた足取り、教科書に載っていそうな完璧な戦い方。会話の端々に小さく存在していた、微かな綻び。

気付けば、俺は部屋を飛び出していた。今でも、何故、どうやって答えを導き出したのか全くわからない。
ただ、コウリが1人で戦ってる、と思った。
根拠も何もないそれは、けれど俺を突き動かすのに十分だったんだ。

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――俺は、コウリと出会ってから2度目の無気力を見た。
俺に向けたものとは違う、激情が封じ込められた嘲笑を見た。

張り詰めた糸のように、今にも切れて壊れてしまいそうな、
もう1人のコウリの姿を。

彼が何を考えているのか、どうして無気力になるのかはわからなかった。でも、それは音も無く足元から忍び寄る何かのように、理由も無く俺の衝動として胸に居座った。
――確固たる、不安。

わざと音をたてて接近すれば、彼はすぐに止まった。
1秒…3秒…10秒…コウリは長い間動かなかったけど、俺も動かずその細い背中を見つめ続けた。

やがて、彼が言葉を発し――すぐに返した俺の言葉に唖然として、振り向いた。

その時の、灯りを探し闇をさ迷う幼い子供のような彼の顔を、俺は忘れないだろう。

その表情が痛々しくて――…もしくは、そんな顔をする程苦しんでいたのに、気付けなかった自分が嫌で、目を細めた。

コウリは驚いた風に目を見開いていて、どこか泣きそうに見えた。