たとえ今日という日を忘れても ―ソードアート・オンライン― (ページ15)

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――深夜2時51分。

「はッ…!」

籠めていた息を吐き出すと同時、気を溜めた突きを相手の脳天に高速で叩き込む。ぐらついたところで距離を取りそうになる自身を叱咤して攻め込む。
まだ体力は7割残ってる、まだいける。

俺が《ホリゾンタル・スクエア》を繰り出したと同時に相手の剣が胸に突き刺さるが、そんなものは関係ない、どうでもいい。
数秒後に相手はポリゴンと共に爆散した。
――…ほら、やっぱり。

勝ってしまえば、体力がどれだけ減ろうと関係ない。

俺は剣を持ったまま、塵のように消えゆくライトエフェクトの中で嘲笑を浮かべた。

――あの日。俺を蝕み支配したあの感情は、もう俺の人格の一部になってしまっている。
1人で戦っていると、どうしてもこうなってしまう。
自分はもう、死んだも同然だと。

徐に上を見上げた。迷宮区の天井は闇に包まれていて、そこに灯りは一切無い。まるで、俺の心みたいだと思った。
1歩踏み出し、歩き出しながら思考する。
今まで俺が話し触れ合ってきた人は、皆生きていた。今はもう覚えてない人達ばかりだと思うが、きっと皆、俺の心を照らす灯りだったんだ。
俺も、生きたいと思った。誰かの灯りになりたいと思った。
――…でも、俺は必ずあの時の自分に戻ってしまう。死んだも同然だと、死んだように存在していたあの俺に。

このデスゲームで皆が生きていく中、俺だけが、止まったままで――…

だから、昇る。敵を全てこの剣で斬り伏せ、全力で上を目指す。
きっと、それが俺に出来る唯一の生きる事だから。

今日も俺は、死にながら生きている。