にかちゃんだよ〜とは言えない② (ページ13)

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君との始まり③ ページ13

sideわたなべ

そもそも、いかにも仕事できそうな女の人って怖くて近づけなかった。ギャルっぽい子はなんとなくオレと近い感じがして全然平気なんだけどさ。

だから藤堂さん……Aさんがマネージャーになったって聞いて挨拶を受けたとき、オレ大丈夫かなって内心焦った。

で、そんなオレに気づいたのが涼太。幼なじみだからか表情から読み取ったらしくて、怖かったら言ってくれたら付き合うよ、だって。お化け屋敷に行くのかよと言いたくなる。

でもその一言はすごく助かった。実際にお願いしたことがあるんだけど。

「藤堂さん、ちょっと。」

「はい！……あ、ゆり組さん。」

振り返ったと同時にオレと涼太が並んでるところを見てゆり組って。しかもめっちゃ笑顔なの。これだけでオレの中で勝手に作ってたAさん像が派手に壊れた。。

ゆり組さんって言ったとき、保育園の先生っぽくてさ。オレ、ちょっとぽかんとしてたら、Aさんの問いかけに気付かないで涼太に小突かれた。

我にかえって用件を話したあと、涼太とふたりになって。

「その感じだと、もう一人でも大丈夫そうだね。」

「そうだな。全然怖くなかった。」

「藤堂さん、子供に接してるみたいだったから見てて面白かったよ。」

随分な言われようだけど、オレとしても保育園の先生とか思っちゃったから強気では言い返せなかった。……まあでも、先生だと思って話しかければいい、その方針は固まったからいいか。

それからはその時の方針通り、先生っていう体で接してたんだけど。

「え、ズブ濡れじゃん。」

「急に激しく降ってきちゃって……。」

ある日、予報にはなかった雨が降ってきて、ズブ濡れになって事務所内に入ってきたAさん。たまたまオレがタクシー待ちでロビーにいたんだけど。

今まで見たことのなかった濡れた髪、肌にはりついて体のラインを見せているブラウス。

やば、ガン見してた。慌てて視線をそらし、バッグに入れていたタオルを差し出す。

「すみません、ありがとうございます。洗って返しますね。」

「ん。いつでもいいよ。」

そこからだ。先生じゃなくなったのは。雨に濡れた姿見てからとか、本当変態かもしれないんだけどさ。

今じゃあの時のことを身体が覚えているからか、Aさんと話そうってなると無駄に照れちゃって。

お前何歳だよって思うけど、そこはオレって幼稚園児だからってことにしといてほしい。