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そうとなればあとはなし崩し的に落ちていく一方だった。
キムソクジンの姿をチラリとでも見られた日は気分が良かったし、一言二言の会話を交わした日は更に心は踊った。
こんな歳になって、思春期のような経験が出来るなんて、と浮かれていた。
ただ、悟られてはならないと肝に銘じていた。
いつも通り、あくまでもいつも通りを装うことは怠らなかった。
私を変えた給湯室での一件のような出来事はそれ以来一度も起こらなかったがそれで良かった。
ところが、キムソクジンが入社して1年が経った夏の頃
唐突に彼は会社を辞めた。
「引き抜きだって」
会社に後ろ足で砂をかけていくような行為ですら、キムソクジンだから と容認される事に流石に違和感を感じながらも
水面下で行われたその事案にも、結局挨拶ひとつも無しに綺麗さっぱり片付けられたデスクにも どうしたって狼狽えざるを得なかった。
「あぁ、折角の目の保養がいなくなっちゃったね」
私が口に出したくても決して出せないその一言をあっけらかんと漏らす同期に素っ気なく そうだね と返しながら社用携帯を眺める。
画面に映るキムソクジン という項目を
消そうにも消せない未練がましい自分が滑稽だった。
どうせ、社用の番号なのに。後任が引き継ぐだろうその番号をそのままに、社用携帯をそっと閉じた。
これで私の密かな楽しみが終わったことを寂しく思う一方で、結局最後まで深入りしなくて済んだことへの安堵も大きく、
このままいつかまたあの中学時代の先輩のように 懐かしく思い出すこともある淡い記憶になるのだろうと思っていたのだが
彼が居なくなったあとですら、社内でキムソクジンの名前を聞く事がちらほらとあった。
それは、私より2年ほど先に入社している女性と付き合っているからだということを知ったのは キムソクジンが会社を去ってから数日後の事だった。
ショートカットが似合う、キムソクジンに負けず劣らずぽってりとした唇の小柄な女性だった。
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K(プロフ) - sunnyさん» コメントありがとうございます!ジンくん目線!凄くいいですね。整理が着いたら書いてみたいと思います!本当に嬉しいお言葉ありがとうございます。 (2021年10月15日 20時) (レス) id: 2712528a63 (このIDを非表示/違反報告)
sunny(プロフ) - すごいどストライクの作品で大好きです💜!この作品のジンくん目線?の内容もすごい気になります!これからも大変かと思いますがお話頑張ってください!! (2021年10月15日 18時) (レス) @page37 id: 5ee4f4580f (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - びぃんさん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉を本当にありがとうございます。こんな最低の男にしてしまって申し訳ないですが気に入っていただけて良かったです! (2021年10月11日 18時) (レス) id: d7c2a5623f (このIDを非表示/違反報告)
びぃん(プロフ) - いやめちゃくちゃ好きです何だこれは……すっごい昂りましたありがとうございます神様仏様K様…… (2021年10月11日 18時) (レス) @page37 id: 57661bab90 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - ほまさん» コメントありがとうございます!激アツ、凄く嬉しいです!風景を思い描いていただけて良かったです。これからも少しずつですが書き進めていこうと思いますのでまたご覧頂ければ幸いです。 (2021年10月11日 0時) (レス) id: d7c2a5623f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:K | 作成日時:2021年10月2日 19時