【utit】黒く染まったクリスマス【A f t e r t h e R a i n】

高校生になった彼方の苦悩 ページ46

駅に行くと、少しざわざわと騒がしくて、警察の人がところどころにいるのが見えた。
なにかあったのかとは思ったけど、あまり気には止めなかった。

『真冬お兄ちゃん。電車あと５分だって』

「あと５分？……あー、いつも乗ってるやつ逃しちゃったのか。ていうか出たの３分前じゃん。ケンカせずに早く出ればよかったなぁ……」

ため息をついた真冬お兄ちゃんに苦笑したあと、私はなんとなく後ろを向いた。
すると、ふらふらとした足取りをした人がこっちに向かって歩いてくるのが見えて、お酒に酔った人がいたのかなと思い、じっと見ていた。
電車の音が近付いてくる。
それと同時に、ふらふらと歩いている男の人も近付いてきていた。
不意にその人と目が合った瞬間、急に早足になって目の前に来たと思ったらドンッと肩を押されて線路に落ちた。
電車が近付いてくるのが分かって、目を瞑った。
すると、ギュッと誰かに抱きしめられた。

『……真冬、お兄ちゃん？』

「絶対……一人でいかせない……」

真冬お兄ちゃんは声も体も震えていて、怖くて泣いていることが分かった。
私もやっと状況が理解できて、涙を流した。
なんで、こんなことになったんだっけ。
……彼方お兄ちゃん……

「A！真冬！」

聞こえた声は、聞き覚えのある声だった。

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