検索窓
今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:5,217 hit

ページ6

息を整え二人の席へと行くと、髪が長い女の子……
白坂さんは僕に向かって嬉しそうに明るい笑顔を向けた。
なぜ名前を知っているのかというと、普通に本人が自己紹介をしてきたから。
……覚えるつもりはなかったのだが、会う度に言われてしまえば嫌でも覚えてしまうもので。
確か髪が短い子は、立川さん、とかそういう名前だったような気がする。
小さくため息をついた後、営業スマイルを二人に振りまいた。

『御注文は?』

「いつものでお願いします」

元気よくそういう立川さんに、僕は分かりましたと丁寧に答える。
いつものというのは、白坂さんがコーヒーで、立川さんがカフェオレ。
どちらも冷えているもの、というのがいつものメニューである。
だが、たまに温かいものを、という注文が最近は多くなった。
きっと冬に近付いているからだろうが。

「ねぇ相川君……今日って」

『すぐお持ちしますね』

遮るようにそう言うと、早足でその場を立ち去った。
ああやって誘われることは少なくない。
最近は言われないように、聞かないようにとなるべく避けてはいるが、もうそろそろ鬱になってきそうだ。
厨房に入り伝票を渡したあと、僕は壁にもたれかかり蹲った。
鳥肌が立つ腕をさすり、息を深く吐いた。

『……鳥肌、とまんない』

あの視線が、あの目が、怖くて、気持ち悪くて……
酷い吐き気が僕のことを襲った。
まるで、忘れていたはずのあの時みたいで、目の前が歪んでいくのが分かる。
……最悪だ、せっかく忘れてたのに。
すると、小さくて温かい手が僕の肩に触れた。
見てみると、目に涙を溜めたAがそこにはいた。

「真冬お兄ちゃん……大丈夫?」

『…………大丈夫、だよ』

無理やり口角を上げてAに笑いかけるが、Aはさらに泣きそうになっていた。
すると、頭を誰かに優しく叩かれた。
上を見ると、そこには彼方が立っていた。

「……仕事終わったから変わる。休憩しといて」

『でも、彼方もあの二人苦手なんじゃ』

「弟がそんな風になってるのに変わらない兄はいないでしょ。一応店長に体調悪いって話しといて」

彼方とAは僕の頭を撫でると、ホールの方へと回ってしまった。
二人に撫でられたところに触れると、吐き気が楽になったような気がした。

4→←2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (23 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
50人がお気に入り
設定タグ:歌い手 , AftertheRain , そらまふ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あづの ひみ(元朝日菜薔薇)(プロフ) - ちょこさん» コメントありがとうございます!好きと言って頂けてとっても嬉しいです!更新はかなりゆっくりペースですが、気長に待っててくれると嬉しいです…! (2022年6月6日 16時) (レス) @page16 id: 4e3b964e65 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - この作品好きです!続き楽しみに待ってます! (2022年6月6日 13時) (レス) @page16 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
あづの ひみ(元朝日菜薔薇)(プロフ) - はおとさん» コメントありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります!! (2021年7月2日 19時) (レス) id: 4e3b964e65 (このIDを非表示/違反報告)
はおと(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!更新待ってます!! (2021年7月2日 18時) (レス) id: 36f12069ba (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あづの ひみ(元朝日菜薔薇) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/AdAsnhmp/  
作成日時:2021年6月6日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。