１章 嫌いな常連客 まふ ページ4
僕達兄妹は、今年の夏頃からバイトを始めた。
小さな喫茶店だが、そこの店長さんが非常に優しく、快く僕達のことを受け入れてくれた。
両親がいないこと、苗字が違うのは父親が違うから、ということを聞いても、同情したような顔を一切見せずに笑顔を向けてくれた。
こんないい人がAや彼方以外にもいるんだ、なんて驚いたが、それは二人も同じようだった。
残業なし、休みの連絡をすれば普通に休んでもいいし、早退だってそれなりの理由があればいい、そして給料もそれなりにあるときた。
かなりのホワイト企業だと思うのだが、なぜ人が入らないのかがよく分からない。
「真冬。…………大丈夫？」
聞き覚えのある声にハッとすれば、そこには心配そうな顔をする彼方が立っていた。
サファイア色の瞳がゆらゆらと揺れたのちに、僕のことを映した。
『……ごめん、ボーっとしてた。で、何？』
「真冬はホールの方に回れって。こっちは俺がやるから」
『りょうかーい。……心配かけてごめんね、彼方』
彼方は何も言わずに微笑むと、僕の頭をぐしゃりと撫でて背中を押してくれた。
まるで行ってこいと言われているようで、振り向かずに伝票を手に取ると接客を始めた。
見た目のこともあるからなのか、たまに女子高生に絡まれたりすることはあるものの、それ以外はかなりスムーズに進めることが出来た。
きっと彼方は優しいから断れずそのまま話聞いてたりしたから交代になったのだろう。
そんなことを思いつい頬が緩んでしまった。
そんな時、視界の端にふわりと揺れる桃色の髪が見えて、視線をそちらにずらした。
Aは必死にお客さんの注文を聞いて、メモを取っている。
喫茶店の制服姿が思った以上に可愛くて、最初の頃は僕と彼方が慣れるまでに苦労した。
だが今では見慣れた光景のため、見ても今日もAが天使だな、くらいにしか思わなくなった。
……男に接客しようとした時はさすがに今でも止めるけれど。
「……以上でよろしいでしょうか？……はい、ありがとうございます！」
ふわりと向けられる明るい微笑みは、僕達だけの特権が良かった。
でも、Aが楽しそうならばそれだけでいいと思うのは、それほどまでにAにゾッコンということなのだろう。
……それも悪くはないんだけどね。
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あづの ひみ(元朝日菜薔薇)(プロフ) - ちょこさん» コメントありがとうございます！好きと言って頂けてとっても嬉しいです！更新はかなりゆっくりペースですが、気長に待っててくれると嬉しいです…！ (2022年6月6日 16時) (
レス) @page16 id: 4e3b964e65 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - この作品好きです！続き楽しみに待ってます！ (2022年6月6日 13時) (レス) @page16 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
あづの ひみ(元朝日菜薔薇)(プロフ) - はおとさん» コメントありがとうございます！面白いと言っていただけて嬉しいです！更新頑張ります！！ (2021年7月2日 19時) (レス) id: 4e3b964e65 (このIDを非表示/違反報告)
はおと(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです！！更新待ってます！！ (2021年7月2日 18時) (レス) id: 36f12069ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あづの ひみ(元朝日菜薔薇) | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/AdAsnhmp/
作成日時：2021年6月6日 9時
