小栗 虫太郎【友人】 ページ34
「……虫太郎くん」
「折角君の数少ない友人が遊びに来たのだから、せめてその蔵書から目を離すとかさあ」
「…五月蝿い、邪魔だ」
「何をぅ、学生時代の友人で残ってるのはもう俺だけだろ!」
大事にしろ!と声を荒らげてみても、彼は依然として本から目を離さない。
そんな彼が気に入らなくて、俺も少し意地になって。
彼の隣に座って、わざとわあわあ騒ぎ立てる。
そんな俺に苛立ちが募ったのか、漸く本をぱたんと閉じた。
「っ、だいたいお前が勝手に来たのだろうが!」
「いやまあ、そう言われると弱いけど」
入れてくれる虫太郎くんも虫太郎くんでどうなの?と口から出かかったが、言ったら追い出されちゃいそうだから飲み込んだ。
「いやあ、虫クンたら優しいもんなあ」
「急に猫撫で声を出すな、吐き気がする」
「またまたぁ」
褒められて嬉しいくせに、と軽く小突けば、鼻を鳴らしてそっぽを向かれる。
……事実、彼は本当に優しいのだ。
素直では無いけれど、何やかんや付き合ってくれる。
その飾らなさが心地良い。
そんな彼に甘えっ放しなのは自覚している。
もしかしたら、彼は我慢しているのかも…と考える時さえある程に。
「…少しは虫太郎くん離れしないといけないね」
ぽつ、と言葉を零す。
その瞬間、手首が掴まれる。
__先刻までそっぽを向いていた彼と目が合う。
「離れるつもりなのか、貴様」
手首が ぎり、と音を立てる。
爪が食い込む痛みが走って、思わず顔を顰めた。
「私を友人と云ったのはAだろう」
「虫太郎く、」
言葉を挟もうとすれば、更に手首に重圧が掛かる。
なにくそ、腹を蹴って剥がしてやろうか、と足を持ち上げたとき。
__彼の目が、潤んだ気がして。
そんな彼に注視していれば、手首の縛りが弱くなる。
あまりにも彼の心が読めなくて、虫太郎くんの顔を覗き込もうとした。
そうすれば、ゆらりと俺の方に体重を掛けてくる彼。
仕方ないので、そのまま彼を抱き留める。
「……虫太郎くん、?」
背中を摩る。
彼は顔を自分の両手で覆っていて。
暫くの沈黙の後に、彼は掠れた声で云った。
その言葉だけで。
俺は彼を蹴り飛ばす気なんて失せてしまったのだ。
"_お前迄傍から居なくなれば、私は____"
**********************
マーガリンさん、リクエストありがとうございました!
続く お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←ニコライ・ゴーゴリ【反応】
353人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
胡桃バター(プロフ) - りんごあめさん» リクエストありがとうございます!執筆までしばらくお待ちください (11月10日 1時) (レス) id: 55a2e79d32 (このIDを非表示/違反報告)
りんごあめ - 森さんとのお買い物デートが読みたいです! (11月3日 18時) (レス) id: bd46442a68 (このIDを非表示/違反報告)
マーガリン - ありがとうございます!! (2023年4月4日 8時) (レス) id: 7ba1c946a0 (このIDを非表示/違反報告)
胡桃バター(プロフ) - マーガリンさん» リクエストありがとうございます!慣れないキャラではありますが、精一杯書かせていただきますので、しばらくお待ちください。 (2023年4月3日 22時) (レス) id: ed4c5148d7 (このIDを非表示/違反報告)
マーガリン - 小栗さんのヤンデレってできますか? (2023年4月1日 8時) (レス) @page33 id: 7ba1c946a0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:胡桃バター | 作成日時:2016年6月19日 22時