人嫌いな彼女【中原中也】 (ページ29)

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樋口　過去ページ29

Aを救助してからずっと
中也さんは車の中でAの手を握っていた

あの芥川先輩まで暗い顔をしている

私は何が何だか理解出来ずに
ただただAの無事を祈ることしか出来なかった

森｢明日までには目が覚めると思うよ。｣

私を含めた全員が胸を撫で下ろす

ふと昔の頃を思い出す＿＿＿＿

私がポートマフィアに入ったばかりのころ、
芥川先輩と廊下を歩いている時だった

『あっもしかして、新入りさん？』

パァっと明るく笑って誰かが此方へ走って来た
が、直ぐに芥川先輩を見て冷めた顔付きになった。

『……久しぶり』

芥川｢……｣

二人はずっと睨み合っている

樋口｢あ、あの｣

『あ、御免なさい！
　私は須宮A。ポートマフィアの幹部だよ』

樋口｢ひ、樋口一葉と申します｣

不思議な人だな

第一印象はそれだった
ただ、微笑んでいる其の姿はとても可愛らしかった

中原｢お、Aも樋口も丁度良いところに｣

確かこの人は中原中也さん

中原｢A、樋口の初任務に付き合ってくんねぇか？｣

『勿論です』

初任務
その響きに体が強張る
足引っ張らないようにしないと……

『此処だよ』

任務の場所は廃ビルだった。

『私は何かあったら直ぐに行くからね！』

樋口｢は、はいっ｣

本当に優しい人だ
此の人がポートマフィアの幹部だなんて信じられない

銃声が響く

樋口｢くっ……｣

私は腕を撃たれて銃が撃てずにいた

すると胸ぐらを掴まれた
油断していた…！

樋口｢誰、か……｣

もう終わりだ

諦めかけていた其の時だった
いきなり目の前の男が倒れていた。

『あぁ汚い。後で洗わないと』

樋口｢Aさん！？｣

Aさんは笑っているけれど
目は笑っていなかった

『私ね、人間が此の世で一番嫌いなの』

手に持っているナイフを構える

『だから……』

Aさんは銃相手にいきなり飛び出した。

樋口｢あっ危ない！相手は銃を＿＿｣

止めようとしたが、目の前には敵の死体しかなかった

『嫌いな物は壊すの』

Aさんの顔を見るとやっぱり笑っていた
其の儘私の元へ来て私の腕を腰に巻いているリボンできつく縛った。

『後で首領に診て貰ったら今日は帰って休んでね
　それと…

　私と友達になってくれない…？』

Aさんは顔を真っ赤にして言った

答えは勿論決まってる

樋口｢…宜しくね。A｣

私達は其の日以来、
お互いにとって一番の友達になった。