【文スト】鈴の音が鳴る時

卅玖 ページ40

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ほぼ消えかけていた意識の中に光が差し込んだ様な気がして Aは目を開ける。


｢Aちゃんから離れろ！｣

『ふ、たり…とも……』


震えながら手を伸ばすも虚しく、白露の術によって体が持ち上げられた。

バチバチと稲光の様な光に包まれ、小さな呻き声を上げるA。


中島は四肢を虎に変化させ飛び掛るが 容易に避けられてしまう。



｢…A、あの子気に入ったわ。珍しい色彩の瞳。｣


笑いを零しながら言うと、Aを地に下ろす。
白露はパチンと指を鳴らし出現させた刀をAに握らせ ニコリと妖艶に微笑んだ。

その意図に気が付いたのは太宰。


｢退(ひ)け！敦君！｣


その瞬間、白の刃が中島の頬を掠めた。


｢ッ……どうして…Aちゃん！｣


顔を絶望の色に染めたAの持つ刀には 中島の赤い血が 刃を伝(つた)っている。

その刀は微かに震えていた。


Aの頬を伝うのは透明な涙。


『厭……ッ…、こんな事、したくな…ｯ』


言い切ることすら許されず、またしても稲光がAを襲う。

彼女に身体の自由がない事が分かり、中島は思考を巡らせた。


そして気が付く。

Aの首に張り付いた 赤い文字が綴られた札の存在に。



｢(あれを剥がせれば…！でも、どうやって…)｣


斬撃を避けながら 必死に考える。


傷付けずに札を剥ぐ方法を。
自分ではAにも傷付けてしまう可能性がある。

けれど 此の儘では戦う事すら出来ない。


そして 白い刃がもう一度、中島を襲った。

寸前で避け、犠牲になったのは前髪数粍(ミリ)。



｢(危ない……紙一重だ…ｯ)｣


床を踏み締めて跳躍し、後ろへと飛び退く。

その時、ある一つの考えが浮かんだ。


居るではないか、繊細な攻撃を出来る人物が。

息を吸い込み、その人物の名を叫んだ。



｢鏡花ちゃん！！｣




名を呼ばれ数秒、泉は駆けつけた。
自身の異能 "夜叉白雪" を後ろに佇ませて。


｢鏡花ちゃん！Aちゃんの首にある札を切っ…｣


中島が言い切るよりも早く、夜叉はAの首に張り付いた札を切った。
そして 彼女を抱き抱え、主人の元へと戻る。


｢有難う、白雪｣


背中を摩られながら立ち上がるA。
少し咳き込みつつも、命に別状は無さそうだ。


そして 中島に頭を下げる。


『御免なさい……本当に…！』

｢大丈夫だよ。大した怪我じゃないから。……それに、今は｣


視線の先には 笑みの消えた白露の姿。

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