検索窓
今日:7 hit、昨日:21 hit、合計:42,531 hit

卅伍 ページ36




「それじゃあ、またね。Aちゃん」

『うん、有難う。敦、太宰さん…またね。』


鳥居を潜ったものの、広がるのは石畳の参道。
振り返っても何も無い。

「な……」

「まァ、そう身構えないでくれ」


声がした。
聞き覚えのある 落ち着いた声。

甘く、優しい。


「……あ、貴方は」

「久しぶりだね、少年。藍弥だよ」


其処居たのは、Aちゃんの主人である神様。
夜を司る神 藍弥様。


─────
───



彼から教えられた様々な事。


藍弥様は、Aちゃんのやっている事に気付いていたこと。

けれど 無理に辞めさせては彼女が壊れてしまう事にも気付き、知らないふりをして黙認を続けたこと。

そして 下手に行動すればAちゃんと藍弥様は消される事を…。


「……あの方…いや、白露は 確かにAの母を地獄から救い出す事は出来る。けれど、だ。白露はそんな気なんてサラサラ無いんだよ」

「大方、働かせるだけ働かせて 駄目になったら捨てる…といった辺りかい?」

「嗚呼、そうだと思うよ」



僕は胸が傷んだ。

彼女は利用され、捨てられる運命にあったんだ。
屹度 Aちゃん自身も薄々は気付いている。


「……僕達は、Aちゃんと戦います。」

「うん、聞いていたよ。…私には出来ない事だ。本当に、有難う」


藍弥様は穏やかに微笑み、僕の頭をくしゃくしゃと撫でる。

顔を見上げると その瞳は優しさと愛情に溢れていたけれど、それは僕に向けられたもので無いことは 直ぐに分かった。


「藍弥様にも お願いがあります」

「ん?何かな」

「戦いが終わったら Aちゃんの事を暖かく向かい入れて、その愛情で包み込んであげて下さい。」


僕がそう言うと 少し悲しげな顔をし、目線を下にやった。


「………私に、そんな事をする権利は無いよ」

「Aちゃんは 貴方の事を家族のように慕っていると思います。だから…どうか、お願いがいします…!」


出来る限り頭を下げる。

良い返事が聞けるまで 上げるつもりは無い。
これ位しか 僕には出来ないから。

卅陸→←卅肆



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (62 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
47人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

七海@返事・更新滞ります(プロフ) - 月瀬さん» そう仰って頂けて何よりです。最後の感想失礼致します(よ、良かったです…、しょうもない案では有りますが使用して遣って下さい←← ませ。長文失礼致しました。若し何か御座いましたらボードで御知らせ下さいませ) (2020年1月5日 17時) (レス) id: 94153de35f (このIDを非表示/違反報告)
月瀬(プロフ) - 七海@返事・更新滞りますさん» 楽しそうです!え、書きたい…!← (2020年1月5日 17時) (レス) id: 9a5360aa7e (このIDを非表示/違反報告)
七海@返事・更新滞ります(プロフ) - 月瀬さん» いえいえ。二回目失礼致します。(そうですねぇ…。在り来りかも知れませんが……『泥棒』系統の噺何か如何ですかね…?(本当、この位しか出なくて済みません……)) (2020年1月5日 17時) (レス) id: 94153de35f (このIDを非表示/違反報告)
月瀬(プロフ) - 七海@返事・更新滞りますさん» ありがとうございますー!是非案ください! (2020年1月5日 17時) (レス) id: 9a5360aa7e (このIDを非表示/違反報告)
七海@返事・更新滞ります(プロフ) - 完結、御目出度う御座います…!(もう最後の最後迄、度肝を抜かれっぱなしでした…!案……出しても良いのなら、出してみたい所存なのですが…如何でしょうかね…??)長文失礼致しました。 (2020年1月5日 17時) (レス) id: 94153de35f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:まふ | 作成日時:2019年12月6日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。