卅壱 ページ32
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その瞬間だった。
凄まじい爆発音が、私を包み込み 耳を劈いた。
家の燃える匂い、砂埃、噎せ返る様な黒煙。
私は、理解が出来なかった。
多すぎる脳に流れ込む情報量。
唖然としてその様子を見ていた。
燃え上がる家だったそれは いまは唯の火柱となって 只只火の粉を散らしている。
『おか、ぁ…さん……?』
無意識に零れた言葉は ボウボウと燃え盛る人の音と 近くに住む奥さんの悲鳴で掻き消された。
手を伸ばしても、掴めるものなんて無い。
唯 空を切り、小さな音を立てて地面に落ちるだけ。
嗚呼、喉が痛い。
『ッいやぁぁぁあああああ!!!!』
周りは、哀れなモノを見る目で私を遠巻きに見つめた。
同情する声、クスクスと嘲笑う声。
声には出さずとも 人の思考と言うものは瞳に現れるもので…。
私を見つめる大人達の瞳は、それら何方かのモノを映し出し 私に向けていた。
─────
───
─
『……さむい…なぁ………』
私は家から離れ、何日も歩いていた。
燃え盛る火の奥から母の骸が見えた時、精神は壊れてしまいそうだった。
けれど それでは意味が無い。
屹度 母は、元からこうする事を考えていたんだろう。
父を葬り、自身も……。
それなら 私も連れて逝って欲しかった。
1人だけ残して逝ってしまうなんて、酷いよ。
亡き人に言った処で何も変わらないけれど…。
悲しみと恨めしさの織り交じった黒い感情を 心の中だけに押し留めることは出来なかった。
どれくらい歩いたか。
目の前には 小さな鳥居とお社。
……古い、今にも壊れそうな神社だ。
眠るところも無い。
バチが当たるかもしれないけれど 此処で一晩寝かせてもらおう。
頭を下げて 本殿の中に入る。
蜘蛛の巣と埃は気になるけど、多少でも寒さが凌げれば万々歳。
奥の方に進み、隅に背を丸めて横になった。
寒い、寒いけれど
野ざらしで風に当たるよりは 何倍もマシ。
久しぶりに屋根の下で寝たからか、自分でも驚く程に眠りにつくのが早かった。
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明けましておめでとうございます!
ゆるゆるな作者ですが、
本年も どうぞよろしくお願い致します。
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七海@返事・更新滞ります(プロフ) - 月瀬さん» そう仰って頂けて何よりです。最後の感想失礼致します(よ、良かったです…、しょうもない案では有りますが使用して遣って下さい←← ませ。長文失礼致しました。若し何か御座いましたらボードで御知らせ下さいませ) (2020年1月5日 17時) (レス) id: 94153de35f (このIDを非表示/違反報告)
月瀬(プロフ) - 七海@返事・更新滞りますさん» 楽しそうです!え、書きたい…!← (2020年1月5日 17時) (レス) id: 9a5360aa7e (このIDを非表示/違反報告)
七海@返事・更新滞ります(プロフ) - 月瀬さん» いえいえ。二回目失礼致します。(そうですねぇ…。在り来りかも知れませんが……『泥棒』系統の噺何か如何ですかね…?(本当、この位しか出なくて済みません……)) (2020年1月5日 17時) (レス) id: 94153de35f (このIDを非表示/違反報告)
月瀬(プロフ) - 七海@返事・更新滞りますさん» ありがとうございますー!是非案ください! (2020年1月5日 17時) (レス) id: 9a5360aa7e (このIDを非表示/違反報告)
七海@返事・更新滞ります(プロフ) - 完結、御目出度う御座います…!(もう最後の最後迄、度肝を抜かれっぱなしでした…!案……出しても良いのなら、出してみたい所存なのですが…如何でしょうかね…??)長文失礼致しました。 (2020年1月5日 17時) (レス) id: 94153de35f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まふ | 作成日時:2019年12月6日 22時