【文スト】鈴の音が鳴る時

廿肆 ページ25

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Aは 焦燥に駆られていた。

焦りと苛立ちの混ざった感情は どうしても収まらず、箒を握る手に 力が入る。


彼女は 自らの主人である藍弥にも隠し、"ある事" を、行っている。
それは、探偵社や警察が調べている
連続行方不明事件の根本に繋がり、答え(Answer)へと導くものでもあった。

けれど、その事は誰にもバレてはいけない。
主人にも、愛猫(あいびょう)にも、友人にも。


─決して、気付かれてはいけないよ─



『ｯ……ぅ、あ…』


ズキン、ズキンと痛む頭を抑え 歯を食いしばる。


『見つかったら……バ、レたら……オシマイ……』


自身に言い聞かせる様に ぶつぶつと繰り返す。
普段から白い顔も、青くなり額には脂汗が滲んでいた。

ぜェぜェと 乱れた息を落ち着かせるため、ゆっくと深呼吸をし ゆっくりと整えていく。


呼吸が静かになる頃には 顔色も多少は戻り、彼女の心の内で荒れていた心情も 落ち着いた。

『(大丈夫……失敗さえしなければ、気付かれる事は無いから…冷静に、慎重に行動すれば大丈夫だから……)』


ふぅ、と息を吐き出し 力の入っていた手を緩める。
冬の冷たい空気が 妙に火照った身体を良い具合に覚ましてくれる様だ。

気持ち良さげに目を細めていると、


───ギィ


と、音が聞こえた。
間違いない、彼処(・・)の扉が開かれたんだ。

頭がそう考えるのが先か否か、Aは走り出した。
音の下方向へ……全ての秘密が隠されたあの場所へ。

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