【文豪ストレイドッグス】太宰治と狼少女2【太宰治】

あってはならない ページ46

ボクはかつてポートマフィアの狼と恐れられた女だ。

敵地に乗り込み人を殺し一夜にして組織を落としてきた事も多々。

そのポートマフィアから抜けて四年間見つけられずに過ごし、生き残り敵対する探偵社に在住し実質裏切り者となった。

ボクの経歴を露見すれば一般人はおろかポートマフィアの構成員でさえ震え上がる。




そうだ。ボクは昔からそんな女だ。
落ち着け。これしき大した自体ではない。

(大通りに出ればきっと…、)

そんな事を思い大通りに出ると、幾度なく見たあの景色ではなく、知らぬ土地。
地図を見たり少し歩き回って見たり。

しかし一向にわからない。





……嘘だろう。

かつてポートマフィアの狼と恐れられ、一組織を相手にしても敵なしと言われ讃えられたボクが。





「……………この歳で…迷子だと……」





知らぬ大通りから一度背を向ける。

冷や汗を滴らせたボクを、憎くもさんさんと光り涼しい晴天の日差しが照りつけた。

いっそ現実逃避したかった。いや、あまりにも屈辱的な事実に現実逃避していた。


ボクと言えど迷子くらいなった事はある。
それも10年ほど前の話だ。

今となってはここ数年迷子なんて子供チックなミスはしない。はずだった。



…いやいや、やはり嘘では無いか？



ボクがこの歳にもなって太宰と敦と依頼に行く途中に逸れて迷子になるなどふざけるんじゃない。そんな事あってたまるか。

やっぱりこれは嘘だ。気のせいだ。

きっとまた大通りに行けばいつもの道に戻る。これは迷子なんかじゃない決して。


迷子になり4つも歳下の少年に迷惑をかけ此処から以来現場の場所もわからず1人依頼を放置するなどあっていいはずがない。


ゆっくりと背を向けていた大通りにもう一度向き合う。
きっともう一度向き合えばいつもの大通りに戻っているさ。

知らぬ土地などどこにも………………、






先程と変わらぬ知らぬ土地。その現実にまたも硬直して思考を巡らせた。

そして言うべき言葉を1つだけ見つけると、ぽつりと呟いた。













「…………………帰りたい。」

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