epilogue ページ40
あの日から一年と九ヶ月程たった。太宰幹部が裏切ったり、中也さんと時々喧嘩したりとトラブルもあったが、今も順調に付き合いは続いている。今では同棲もしている。
「なあ、A」
そんなある日、中也さんに呼び止められた。
「今夜、空いてるか？」
『はい……あっ、うん』
少し前に中也さんに敬語を禁止されていたのを忘れていた。
「いい酒が手に入ったんだ。一緒に飲まねえか？」
『もちろん。楽しみにしてる』
私がそう云うと、中也さんはそうか、と微笑んだ。
＊
もう子供は寝静まっているであろう時間。私は横浜の夜景を眺めてながら、中也さんとお酒を嗜んでいた。程よくお酒が回ってきた時、中也さんになあ、と声をかけられる。
『どうしたの、中也さん』
「あれからもう二年になるな」
あれ、とは私達が付き合う前にした初デートのことだろう。
「もうそのネックレスもずっとつけているな」
『うん、新しいのも買う気にならないし、これ気に入ってるから』
「そうか」
中也さんはふっと微笑んでから、窓の方へ目を移す。ネオンが光り煌めく。
「なあ、お前にプレゼントがあるんだ」
『プレゼント？』
何かを持っている様子もない。一体何だろうかと首を傾げる。すると中也さんは小さな箱を取り出した。アクセサリーなのだろうか。
中也さんはあのネックレス以外のアクセサリーをつけようとしないのを知っているので、プレゼントにアクセサリーを贈ることはなかった。
「お前がそのネックレス以外着ける気がないのもわかってる。だが、どうしてもこれを贈りたくてな」
中也さんが真剣な眼差しをこちらに向ける。
「＿＿＿＿A、お前を一生守る。だから、」
頬に熱いものが伝った。目頭が熱い。中也さんは私が落ち着くのを黙ってまっている。早く彼の言葉に応えたいのに、涙が邪魔をする。すーっと深呼吸をすると幾分か落ち着いた。
『喜んで＿＿＿＿、中也』
彼、中也が私の指をそっと持ち上げる。薬指を数回撫でてから指輪を通した。指輪のダイヤモンドが光を反射して、私たちを照らす。
＿＿＿＿ああ、私は………、私達は幸せ者だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 368人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雷牙 - 口角が天井に刺さった (4月13日 21時) (
レス) id: 93fa3720ae (このIDを非表示/違反報告)
橘たまき(プロフ) - 黒猫もふお さん» コメントありがとうございます！面白いと言っていただけて嬉しいです！ (8月19日 13時) (レス) id: e2eb5250a2 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫もふお - 神作品をありがとうございます！すごく面白かったです！ (8月19日 12時) (レス) id: 9c4f5ea239 (このIDを非表示/違反報告)
橘たまき(プロフ) - りおさん» ありがとうございます！界隈が違うのに読んでくださって嬉しいです！更新頑張ります！ (2023年3月16日 19時) (レス) id: e2eb5250a2 (このIDを非表示/違反報告)
りお(プロフ) - イベント参加ありがとうございます！キャラクターのことよく知らなかったけど読んでみてめちゃめちゃ面白かったですっ！！素敵な作品ありがとうございます！更新頑張ってください！ (2023年3月16日 19時) (レス) @page29 id: 67c8df008b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：橘たまき x他1人 | 作成日時：2022年3月17日 7時
