【文スト】霊感持ちの異能力者は毎日大変です。

毒々しい程に紅く染まる ページ34

尾崎 side

偶々 鉢合わせたAと曼珠沙華を眺める。


月の光が Aの黒髪を艶々と照らし、周りの花々と対象的な蒼い瞳は 毒々しい程の紅を写す。

｢そう言えばお主…化粧っ気がないのう｣

『最低限はしてますよ？』


ふと ある事を思い出した。


｢これをお主にやろう｣

『これは…？』


渡した箱の中には 口紅。
Aに生えると思って前に買ったもの。


｢Aの白い肌に生えると思うての。どれ、わっちが塗ってやろう｣

箱から紅いの口紅を取り出し Aの唇に塗り、指先で馴染ませる。

『どうですか…？』

｢うむ、見立て通りじゃの｣


白雪のような肌に生える林檎の様な紅。

月下に佇むその姿は 曼珠沙華よりも美しく、そして儚い。


此奴(ｺﾔﾂ)は無自覚に毒を内面に潜ませておる。


その毒に架かってしまえば最後。
命 燃え尽きるまで追い求めてしまう。



｢綺麗な花には棘がある……正にその通りじゃの｣

『え？』



彼岸花とは別にある曼珠沙華の花言葉…

【見る人の心を柔軟にする】



此奴(こやつ)に惚れた中也も
最近ではかなり丸くなったしのう…


｢どうしましたか？｣




Aが顔を覗き込むと同時に ふわりと風が吹く。

冷たくも柔らかい風は Aの黒髪と曼珠沙華を揺らして消える。



『いや、何でもない』


月下に咲く華に
いつの間にかわっちも目を奪われていた。


毒を孕んだ"紅"に囲まれ、頭がふわふわとする。



光に咲く毒花は
誰しもを魅了し、惑わせた。

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