九十八度目 ページ7
No side
『強いのは良いが、あまり暴力的すぎると女性に嫌われてしまうぞ?』
「あぁ?いいんだよ、別に。」
『...それはいくら自分が暴力的すぎても女性が寄ってくるという意味か?』
「ちげぇよ!そんなんじゃねぇし!ただ...」
『ただ?』
「何でもねぇよ!」
そう言って中也はぷいっと顔を背けてしまった。
※Aは気付いていないところ、それは中也からすれば
【A以外は眼中にない。】
という思いからなのだが勿論本人は知る由もない。
だからか。
__なるほど。
『中也は所謂、イケメンと言われる部類か。』
「はぁ!?」
さらに顔を赤く染めた中也が凄い勢いで振り向いたのは無理もない(笑)←いろんな意味で。
__あぁ、そうか。
なかなか人は見かけによらないもので、中也はこう見えても昔からシャイなのだ。
仕事柄、粗雑で荒くれたところもあるし、(馴染みのある者の間では恥ずかしさからと分かるが)ぶっきらぼうなところもある。
でも、案外手先が器用で(これは偏見かもしれないが)男のくせに家庭的。
おまけに
自分で考えるうちに妙に納得してしまった。
『まぁ、力を振るうのも仕事だから仕方ないが...』
「手前は
ボソッとした小さな声で投げかけられた問い。
答えて欲しいような、答えて欲しくないような。
そんな思いが込められた。
『ん?...あー、別に私はそこらへん頓着ないな。』
__誰に嫌われようがどうでもいい。
「え?...あぁ、そっちか。」
中也からすれば聞きたかった答えとは少し違っていたが、実は無自覚天然なAのこと。
__まだこの想いは伝えなくていい。
とにかく、今確かな事。
ふとAが上を見るともう一台カメラがあった。
狙いを定めるように見据える。
『...これが【仕事】だからね。』
バゴォン
頭上からパラパラとカメラの破片が降ってくる。
中也はニヤァと微笑を浮かべる。
「暴力的すぎると男に嫌われるぜ?」
挑戦的な青い瞳が彼女を見つめていた。
お返し代わりに笑みを浮かべ、彼女も言う。
『言ったろ?仕事だって。』
彼女自身、自分の耳に届いた声が随分楽しそうだなと思った。
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作者名:メープル | 作成日時:2017年5月25日 16時