九十三度目 ページ2
文室side
『そういえば、体の調子はどう?これから任務のようだが、あまり無理はするんじゃないぞ?』
「はい、御心配して頂き有難うございます。」
そんな他愛のない会話をしていた。
__彼は太宰の教え子だからな....
ついでに太宰の印象も聞いてみようか。
『芥川、これは私の単純な好奇心なんだが....太宰の印象はどうだ?』
「太宰さん...ですか?」
『あぁ。何分、長い事会っていないからな。君は太宰の教え子だろう?自分の教え子が教え子に何を教えていたのか気になってな。』
そう答えると、芥川は顎に手を添え考え始めた。
__おや。
案外意外に面白い子かもしれない。
何がって、さっきから口調は変わらないのに私が「太宰」と口にした途端に目がキラキラ輝いている。
何というか...凄く嬉しそうに。
まるで自分の手柄を褒められたように。
かの如く誇らしげに。
やがて考えがまとまったのかスラスラと語りだした。
いつも知略を働かせていた事、自分を貧民街から連れ出したこと、そして厳しくも自分を導いてくれたこと等々。
その様子が前述の通り誇らしげで微笑ましかったという事は、せめて中也相手に留めておこう。
見たところ彼はプライドが高そうだし、素直になれないところもありそうだ。
樋口がこの子に惹かれる意味も分かる気がする。
それにしても太宰もこうして誰かを育てるようになったのだ。
少なからず、そのことに感動を覚えた。
本当に....
九年は長い。
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作者名:メープル | 作成日時:2017年5月25日 16時