無頼派 三 ページ23
風呂から上がった後、太宰は黙ったままだった
俺は部屋に戻りチラリと太宰を見る
窓の外の月を見ていた
「……ねぇ、君は死ぬってどう思う？」
「へぇあ！あ、ああ、死ぬ？」
急に話しかけられて変な声が出た……
死……か
俺は食堂からこっそり持ってきた(バレたらこっちの中也が怒るからね)お酒を注ぎながら考える
「……俺は一回死んだんだよね、なのにまたこの世に来た。でも前とは違うから矢っ張り死は一回なんだと思う」
司書から太宰は一回限りの死に焦がれているって聞いた
「どんな風に死んだの」
そう言われて俺は水の中に溺れている感覚が背筋をなぞった
「……心中、入水してね。愛人と。妻には遺書を置いて……ただ貴女を愛していたってね」
「信じられないねぇ、それは」
そう言われて俺も笑う
「そうなんだよな、なんで信じてくれるって思ったんだろうな」
「信じてるんじゃない？妻は判ってくれるって」
そう言われて俺は酒の入った酒気を渡す
「……かもしれないな。でも俺に記憶はないんだ。全部の」
そう言えば太宰は月から視線を此方に向ける
「凄く覚えている事はある。芥川先生を尊敬してた事、オダサクや安吾に……でも、最近思い出したこともある。俺が嫌いな奴らや俺を否定する奴……」
そう言って一口飲む
「……でも、それは新しいんだよな」
「新しい？」
「だって、前の世では会ったことのない芥川先生が此処にいる。佐藤先生の言葉の意味も判ったんだ。だからこれは新しい人生。偶々前世の記憶を持って生まれた俺みたいだなって思う。だから、死は一回限りだ」
そう言えば太宰は小さく酒気で酒を飲む
「……死を体験したからこその感想？」
「かもな、俺はその死があるからもしかした新作を書いたら芥川賞を獲れるかもしれない！」
「……そうなったら、私も君の作品は読みたい」
そう言って太宰が窓辺に肘をつき俺をまっすぐ見る
「君の作品はどこか共感できるからね」
そう言って乾杯した
「ストレイドッグスに」
そう言った時の太宰の笑みは驚きと喜び、そして悲しみが混ざっていた
「ストレイドッグスに」
そう言って一気に飲んだ
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杏奴(プロフ) - こちらの小説を初期から読んでいました。完結しているようですが、番外編として文スト×文アルの短編集を執筆していただけませんか？ (2020年3月17日 12時) (
レス) id: 528c02e07c (このIDを非表示/違反報告)
リュカ(プロフ) - 長音_chinon_さん» ありがとうございます！ (2019年10月19日 11時) (レス) id: ca9d24e2f0 (このIDを非表示/違反報告)
長音_chinon_(プロフ) - 完結おめでとうございます！楽しかったです！ (2019年10月18日 22時) (レス) id: a14d8293f8 (このIDを非表示/違反報告)
リュカ(プロフ) - 歴史馬鹿さん» ありがとうございます！ (2019年10月14日 17時) (レス) id: ca9d24e2f0 (このIDを非表示/違反報告)
歴史馬鹿 - リュカさん» ふふふふ新作おめでとう (2019年10月13日 21時) (レス) id: 9576c83dfa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リュカ
| 作成日時：2019年10月10日 11時
