検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:229 hit

スランプ ページ1

「あーもう!」

 和川学園中等部の北校舎。普段誰も入ることのない四階学習室で、桜乃は叫んだ。書き途中の原稿用紙に八つ当たりするように、それをくしゃくしゃに丸めて投げ捨てる。

「どうしたらいいのよ・・・・!」

 文芸部の副部長。それなのに小説が書けないなんて・・・・! イライラする桜乃の様子を、部長のカレンが静かに見ていた。そして―――

「桜乃、どうしたの? もしかして、スランプ?」

 正面から図星をつかれて、桜乃がシュンとなる。彼女はいつもまっとうなことを言う。ただ、あまりにも堂々とし過ぎて、言われた方は倍にも傷ついてしまう。

「そうなの。実は―――」

 桜乃は段々と話し始めた。それを、カレンは真剣に聞いてくれた。そして、話し終わると、納得したかのように腕を組んで大袈裟にうなずいた。

「つまり、桜乃は、最高のラストが思い浮かばない・・・・と?」

 桜乃が力なくうなずくと、カレンが言った。

「いい? 小説のラストは、とっても大事なの。それが思い浮かばないなら、最初から書き直したほうがいいわ。ま、才能がないなら何度やっても無駄だけどね」

 カレンの嫌味にムッとするものの、確かにそうだと桜乃は思った。超お金持ちのお嬢様であるカレンは、部長として偉そうにしているだけではなくて、小説を書く才能もある。

 それに比べて桜乃はどうだ? コンクールに応募しても、結果はパッとせず、たいして面白い小説も作れない。イコール才能がないのでは?

 でも、カレンがこの文芸部を作った時、確かに言ってたのだ。「桜乃には才能がある」と。なら今のは、桜乃のやる気をあおるための作戦なのかもしれない。そう思うと、やる気が出てきて、また新しく原稿用紙を出した。

 ちらりと横を見ると、ギャグマンガを読んでいる立花奏斗がいる。奏斗は真面目な顔でギャグマンガを読んでは、たまにノートにメモを取っている。はたから見れば、おかしな光景だ。
 
 その横では、有栖川結羽が桜乃と同様原稿用紙を相手に小説を書いていた。こんな名前をしているが、結羽は立派な男子なのだ。


「か、書けた――!」

 それから一時間近くたって、桜乃は小説を書き終えることができた。ついさっきまであんなにも悩んでいたラストも、バッチリだ。原稿用紙をまとめて、カレンのもとに持っていく。彼女の許可が下りなければ、失格だ。

 じっくり読んでから、カレンは言った。

「オチが緩い。ここはギャグ文芸部よ。忘れた?」

続く お気に入り登録で更新チェックしよう!

最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している





目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (1 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
設定タグ:北白川彩葉 , 短編 , 五分後 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:北白川彩葉 | 作成日時:2019年4月28日 8時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。