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26・逃げる/逃げられない ページ29






取り敢えずそいつをぶん殴ってから昇降機から全速力で逃げ出した。勢いに任せて弾丸が尽きるまで銃を乱射した。現実逃避と云う名の想像は、それを行動に移す事は無いまま儚く消えた。



詰まりは現実は何も変わらず、静まり返った昇降機の中で私は数秒前の自分に殺意を抱く。最悪だ、もう消えたい。





「──お前」




そいつが口を開いたのと同時に昇降機が目的の階に着いた。薄い鉄扉が音も無く開く。神なんて信じていないが、この時ばかりは神に感謝したくなった。


廊下に出てしまえば此方のモノだ。一瞬の気の迷いでとんだ愚行に走ってしまった。頭を打った衝撃で可笑しくなったに違いない。

恨んでやる、エリス嬢。否、エリス嬢を追い掛け回して居た首領。



そんな事を考え、安堵しながら昇降機を降りる。









──事は叶わなかった。









「──ッ!?」



突然腕を掴まれ、私の身体は再び昇降機の中に引き摺り込まれる。体勢を崩した私の身体を、後ろから何かが──誰かが支えた。



ふわりと紅茶の薫りがした。普段なら好むその薫りも、今は嗅いだ途端に脳が警告鐘をガンガンと打ち鳴らす。






捕まった。






意識が追い付くより先にその言葉が頭を埋め尽くす。不味い。捕まった。此のままでは後は死刑を待つ囚人と同じだ。逃げなくては。しかし身体が動かない。否、動けない。






「──愚か者。僕から逃れられると思ったか」







耳元で声が云った。吐息が耳に当たり、背筋がぞくりと震える。全身が一斉に熱を帯びて熱くなった。

離れようにも、身体が全く動かない。抵抗も出来ないままに、茫然と目の前で昇降機の扉が閉じるのを見送る。






「云った筈だ。僕の処有物としての自覚を持って事に当たれ、とな」







心底愉しそうに、芥川龍之介は嗤った。








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最近、全く甘くなかったので、次回から甘くなりそうです。そして作者、中間試験日が近く勉強に追われております。更新が滞ってしまうかもしれません!申し訳ありませんが、ご了承くださいませ!

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まかろん - いつになったら続きだすんですか? (2022年3月3日 18時) (レス) @page38 id: e90d3fb299 (このIDを非表示/違反報告)
村越 - 続き……続きが読みたいです!待ってます!! (2018年12月31日 1時) (レス) id: 221d19ed47 (このIDを非表示/違反報告)
なをりん - 茉莉(まつり)さん» ありがとうございます!私の書く文章から、そう云った感想を頂けるのは正に感無量です。伝えたいことをちゃんと拾って下さっているんだな、と思います。滞り気味ですが……どうか最後まで御贔屓ください! (2018年7月24日 23時) (レス) id: 1a2989d09e (このIDを非表示/違反報告)
茉莉(まつり) - 何か無償に泣ける…更新がんばってください、楽しみにしてます…! (2018年7月21日 10時) (レス) id: 5299f2ee2b (このIDを非表示/違反報告)
なをりん - デミオムさん» コメントありがとうございます!私は今年受験生なのですが、そんな温かいコメントにいつも遣る気を分けて頂いています!この作品もあと少しで完結です!最後まで御贔屓ください! (2018年5月21日 21時) (レス) id: 1a2989d09e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なをりん | 作成日時:2017年7月12日 18時

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