弱 者 情 事。【芥川龍之介】

２２･今朝の報道/異国の組織 ページ24

｢…………」




もし私の心の中を覗き込める人間がいるのなら、凄惨なる地獄絵図が見えたに違いない。私は心の中で未だ見ぬ異国の異能者集団を片っ端から切り刻んでいた。



理由は、今朝の報道にあった。






七階建ての建築物が、一夜にして姿を消した。





私は自宅のテレビ画面を睨み付けながら、ワイシャツに袖を通した。恐らく今日の新聞の大見出しを飾る一件に違いないだろう。新聞を頼んでいないので判らないが。


此の建築物が普通の建築物なら、私がこんなに腹を立たせる事もない。此の建築物が普通ではないから、私は怒っている。



マフィアには幾つか、否、数多くの傘下企業が存在する。商店から名だたる大企業まで、その息が掛かる範囲は多岐に渡るが、例の建築物もマフィアの傘下企業が入っていた。


主に構成員の事務所として使われていた其処は、まさに私の担当店舗だった。




前回の一件を生かし、携帯端末の音量を最大にして枕元に置いていた私は今朝早くにその着信音に叩き起こされ、報告と説明を求められていた。お陰様で寝不足だ。頭が痛い。


説明しろと云われても、私が何か知る筈もない。知る筈もないが、見当は付いていた。






崩壊ではなく、解体ではなく、消失。





そんな芸当が出来るのは何処ぞの解体業者を頼るのではなく、異能力を用いるしかいない。それもポートマフィアに対しての、こんな挑発行為が出来るとなれば、余程戦力に自信がある組織だろう。



丁度、条件にぴたりと当てはまる異能犯罪組織がいる。それが組合だ。彼らにはご丁寧に動機もある。用済みのマフィアには消えてもらう、とでも云いたいのだろうか。





｢……莫迦な話」





珈琲を飲み干して、空の器を流し台に投げ入れる。……洗い物が溜まっている流し台からは目を背け、玄関に向かった。



誰であろうと私の担当店舗に手を出して、僅かだが今月分の給料に支障をきたしたのだ。組合、許すまじ。


私は異能力者ではないけれど、マフィアの構成員であることに変わりはないのだから、受けた屈辱は倍にして返す義務がある。




決意を固めて玄関のドアノブを捻り、外に出た。









｢……あれ、財布忘れた」

２３･扉は優しく開けよう/どうにかならないのか→←２１･インターミッション/其の弐

• 金　運: ★☆☆☆☆
• 恋愛運: ★★★☆☆
• 健康運: ★★★★★
• 全体運: ★★★☆☆

ラッキーアイテム

革ベルト

おみくじ

おみくじ結果は「末凶」でした！

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す