11・ご機嫌ナナメ/対応注意 ページ12
「あ、あの塚本さん。この前の単独任務の報告書がまだ……」
「あ゙?」
「い、いえ何も」
肩を縮こまらせて恐る恐る話し掛けてきた黒服を鋭く一瞥する。咄嗟に口を突いて出たドスのきいた声に黒服はひっ、と震え上がると光の速度で私のデスクから退散した。
私が視線を上げて部屋を見渡せば、黒服にグラサンの構成員達がサッと目を逸らし、黙々と作業に(主に書類整理)集中する。
ったく……
「先刻からなんなの、このビミョーな空気は」
「うん、姐さんが元凶だと思う」
「誰の顔が凶悪ですって!?」
「いや誰もそこまで云ってねえよ!!!」
心外だ。このビミョーな空気が私のせいだと云うのか。同意を求めるように近くの黒服を見れば、彼は私と目を合わせまいと必死に壁を向いた。
「……私、避けられてる気がするんだけど」
「気がするじゃなくて避けられてるな」
隣で大きく頷く立原。何のフォローもない薄情な部下をギロリと睨んでから、私も大きく溜め息を吐いた。
「あのね、こちとらまさかの十話目でヒロイン号泣とか屈辱の極みで気が立ってんの。出来の悪い昼ドラじゃないんだから、もう少し展開ってものを」
「姐さんストップストップストップ。メタい」
「うるさいわね!!あんた仕事は!?」
「あんた報告書は!!?」
デスクに座り直し、報告書と睨み合いながら片手でくるくるとペンを弄ぶ。
嫌でも浮かぶのは昨日の光景。及び私の醜態。ここ数日は厄日の連発としか表現の仕様がない。この世の全てが私の平穏の敵に回るつもりのようだ。
何で泣いたんだろう、私。
今までどんな激しい情事の最中だろうと後だろうと、涙を見せたことなんてなかった。……最初の一回を除いて。
なのに。
あいつに太宰さんのことが知れた瞬間に、無性に泣きたくて仕方なくなった。哀しいような、悔しいような感情が抑えきれなくなって。溢れてしまったそれは、止まることを知らずに流れ落ちた。
この終わらない爛れた関係を、私はいつまで続けるつもりなんだろう。いつになればあいつに敗けを認めさせられる?
そもそも、私はどうしてこんな遊戯を続けているのか。
「……もう」
解らない。この世の中の全ての事柄が、偶数で割り切れるようなものなら良いのに。理論上ではいくらでも取り繕えるそれも、自分の感情までは取り繕ってくれない。
答えが解らないよりも、解くべき問題が見当たらないことが、何よりの厄介だ。
- 金 運: ★☆☆☆☆
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- 健康運: ★★★★★
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まかろん - いつになったら続きだすんですか? (2022年3月3日 18時) (レス) @page38 id: e90d3fb299 (このIDを非表示/違反報告)
村越 - 続き……続きが読みたいです!待ってます!! (2018年12月31日 1時) (レス) id: 221d19ed47 (このIDを非表示/違反報告)
なをりん - 茉莉(まつり)さん» ありがとうございます!私の書く文章から、そう云った感想を頂けるのは正に感無量です。伝えたいことをちゃんと拾って下さっているんだな、と思います。滞り気味ですが……どうか最後まで御贔屓ください! (2018年7月24日 23時) (レス) id: 1a2989d09e (このIDを非表示/違反報告)
茉莉(まつり) - 何か無償に泣ける…更新がんばってください、楽しみにしてます…! (2018年7月21日 10時) (レス) id: 5299f2ee2b (このIDを非表示/違反報告)
なをりん - デミオムさん» コメントありがとうございます!私は今年受験生なのですが、そんな温かいコメントにいつも遣る気を分けて頂いています!この作品もあと少しで完結です!最後まで御贔屓ください! (2018年5月21日 21時) (レス) id: 1a2989d09e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なをりん | 作成日時:2017年7月12日 18時