be with you *94 ページ45
綾部はのそりと立ち上がり、横穴の外へ出ようとする。
ところが穴から
僅か顔を出したところで、
・
綾部「――――っ、」
急に張りつめた表情で、
穴の中に再び身を潜めた。
A「!?綾…」
私が言い終わらないうちに綾部が冷たい目で一瞥したので、
私は自分の口を覆う。
全然気付けなかった、と綾部が固い面持ちで呟いた。
静まりかえる空気に、私はごくりと生唾を飲んで外を見ようとするも、
綾部がそれを強引に腕で制す。
綾部「Aは、此処にいて。
安全とは言えないけど、僕の力量じゃ絶対にAを連れていけない 」
A「ちょっと待って、何の話をしているんだ」
私が話についていけずに慌てて口を挿むと、
綾部は簡潔に答えた。
綾部「今、遠方に例の忍が居た」
A「…嘘、まさか、そんな」
私は声と表情を強張らせた。
切り詰めた緊張感が、私を唐突に襲う。
綾部「先輩の話、聞いたでしょ。
僕にとっての忍務はAを引き渡さないこと、て」
A「まさか囮になると?…そんな義務なんて要らない。
万一何かあったらどうする」
私が小声ながらも語気強く言うと、
綾部「そんな心配は皆無だよ」
ここまで言うと、綾部は入り口に鋭い視線を向けた。
彼でも気配を感じ取れるほどの距離に、敵が迫っているということだろう。
綾部は踏鋤を軽く握りしめる。
綾部「ごめんね、A。これが関の山で」
A「謝るな!…やはり、行くのか」
言う唇が、僅かに震えた。
一方の綾部の返答は無い。
言葉を交わすのもかなわなくなると思うと、胸が詰まった。
非情、けれどこれが現実。
咄嗟に手が動き、綾部の薄く土汚れた装束をつかまえる。
A「喜八郎…、今まで、ありがとう」
喜八郎―――。
今になって何故その名が出てきたのか自分でも分からない。
ただ涙を見せまいと顔を伏せ、唇を痛いほどに噛みしめた。
綾部のその時の表情は見えなかった。
けれど、彼はしばしの間、じっと動かない。
綾部「こちらこそ」
入り口から吹き込む風に乗るように
不意に聞こえたその声は、
明日の朝にでもまた会えるかのような、そんな口調だった。
・
・
気付けば、握りしめていた筈の紫の面影はなかった。
あったのは、地面に零れ落ちた涙の跡だけ。
装束の胸倉を握りしめ、うずくまった。
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≪今日のラッキーアクション≫
自分の自慢話を誰かに語りまくれ!!3時間語れれば合格。
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サラスティー(プロフ) - ももりんさん» ももりんさん、ありがとうございます…!戦闘シーンは私自身頑張ったところだったので(笑)とても嬉しいです!応援していただき感謝です…!! (2015年3月27日 16時) (レス) id: 74dfc3bef1 (このIDを非表示/違反報告)
サラスティー(プロフ) - 生まれたてさん» そう言って頂けて嬉しいです、うーチャン!私も大好きなんです、勘右衛門が← (2015年3月27日 16時) (レス) id: 74dfc3bef1 (このIDを非表示/違反報告)
サラスティー(プロフ) - 笹豆腐愛し隊隊長十六夜サザンさん» 殺気、分かります(笑)勘チャン…!嬉しいです!頑張ります! (2015年3月27日 16時) (レス) id: 74dfc3bef1 (このIDを非表示/違反報告)
ももりん - バトルがおもしろかったです!続編楽しみにしてます!! (2015年3月27日 16時) (レス) id: 45e6ebfad2 (このIDを非表示/違反報告)
生まれたて - 勘ちゃんの戦闘シーンがかっこよすぎです!情景が浮かんできました!勘ちゃん愛してます♪ (2015年3月27日 11時) (携帯から) (レス) id: 079e5a0b02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サラスティー | 作成日時:2015年1月12日 13時