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祐基は自動販売機でおしるこの缶でも買おうとスタジオを抜け廊下に出てきた。
するとトレンチコートに防止姿の男が廊下の先をよぎっていくのが見えた。
「今のって……」
祐基は後を追いかけた。
「間宮……じゃないや、真壁守さんですよね？甥っ子がファンなんです」
呼び止めると、男がゆっくり振り返る。
やはり真壁守だ。
端正な顔立ち、すらりと伸びた長い足、テレビで見るままだ。
しかし、その顔はなぜか青ざめている。
「今、僕をつけてたろ。あの脅迫状は、おまえが出したのか？」
真壁は鬼のような形相で近づいてきて、唐突に祐基を攻め立てた。
慌てて祐基は自分が探偵であることを明かし、真壁に事情を尋ねると、
「これを見てくれ。さっき楽屋に届いた」
真壁は声を潜め、一枚の便箋を差し出した。
『私立探偵 間宮★リュウの第七シーズンを降板しろ。さもなくば、おまえの恥ずかしい写真をばらまいてやる』と書いてある。
「頼む、助けてくれ！礼ははずむ」
「じゃあ……甥っ子へのサインで」
取り引きは成立だ。
ふたりはがっちりと握手をした。
「犯人に心当たりは？」
「……怪しい人物は、三人」
その口調は、祐基が小さい頃から見ていた『間宮★リュウ』そのものだ。
「まずはマネージャーの富沢。僕のわがままに毎晩つきあい飲みに行っていたせいで、帰りが遅くなり、新婚早々、嫁に逃げられた可哀想な男だ。次に『間宮★リュウ』の番組プロデューサーの森。『こんな脚本は嫌だ』という僕のわがままに振り回され、急なロケ地変更や小道具変更を重ね、現場スタッフ全員から総スカンをくらってしまった可哀想な男だ。最後に！僕の妻、めぐみ」
「奥さんも容疑者？」
「意外な身内が犯人ってのも、ミステリーの定石だよ。僕の傍若無人なわがままのせいで疲れ果て、ストレスから胃炎を患い、僕に離婚を切り出すも、離婚に応じてもらえないまま現在に至るという可哀想な女だ。それでも僕は妻を愛してるんだ！」
「じゃあ大事にしましょうよ！」
「心から反省している！僕はいつからこんな自分勝手な人間になってしまったんだろう。『間宮★リュウ』の第五シーズンあたりからか？いっそやめちゃおうかな……最近人気も下火だし。僕は落ち目なんだ……」
真壁は突然いじけだしてしまう。
「めんどくさい人だな……」
祐基は憧れていた『間宮★リュウ』の意外な姿を見て、 ため息をついた。
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作者名：MaRU | 作成日時：2018年4月17日 16時
