来るべくして ページ6
威「もしかして、これと一緒?」
ポケットから取り出したものを彼女に見せてやる。手を広げると俺が先程拾ったオレンジ色のガラスが、またキラキラと輝く。それを見てか彼女の目もキラキラと輝き始めた。
「そうそう!これだよこれ!ていうかスゴいね!オレンジ色のって中々見つからないのに!」
威「そうなの?」
首をかしげてそう聞くと、彼女はうんうんと頷いた。そのオレンジ色を見つめて、「レアだよレア!」と、興奮しているように弾んだ声で言う。こんなちっちゃなもので喜ぶなんて、やっぱり変わり者だ。
威「…そんなに好きならあげるよ」
「え」
あまりにも喜ぶもんだから、俺はそれを彼女に差し出した。が、彼女は一瞬目をまた丸くさせたかと思えば首をブンブンと横に振り始めた。
「ダメだよ!こんなレアなの、貰えない!」
威「いや、俺からしたらただのガラスだからね」
彼女にとってこれは宝石にも勝るのかもしれないけれど、俺が見たらただのガラスの欠片。綺麗だったからなんとなく拾っただけで、別にどうしても必要という訳ではないのだ。そう伝えるも、彼女は尚も首を縦には振ろうとはしない。
「ダーメ!これは君が拾ったんだから君のものだよ!」
差し出した俺の手をグイッと戻させる。頑なに受け取ろうとしない彼女に、俺は強要をするつもりもないので、「そう?」と適当に呟いてはそれを夕日にかざした。
威「まぁ、いいけどさ」
「…うん、だってその色、君みたいなんだもん」
俺?と自分を指差すと、彼女は微笑んで頷く。
「オレンジ色。君の髪の色と同じでしょ。それはきっと、君に来るべくして来たものなんだよ」
威「…よく分かんないけど」
…やっぱり変な奴だなぁ、と。そう思いながら彼女を見やると、ニヒヒ、と無邪気に笑う。茜色が、彼女の輪郭を優しく照らす。柔らかな影が、彼女の顔には落ちていて、なんだか幻想的だった。
威「…それで、君はシーグラス?…を集めるためにここに居るわけだ」
「うん」
威「なんでそんなに集めてんの?」
それで何か作ってんの?と、そう問い掛ければ、ううん、と首を振る。
「前はこれでペンダントとかも作ったりしたけど、今はコレクションするだけ」
威「…理由もなく?」
「なく」
コクン、と頷いた彼女。
威「……変態…?」
「物好きって言ってくれるかな」
女の子に変態はないでしょ、と苦笑いを浮かべて。だってこの暑い中、こんなガラスの欠片をコレクションするためだけにずっとここに居座り続けるなんて、変態だとしか言いようがない。
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月兎。(プロフ) - ピピコさん» ふふ、今だにみに来てしまいます笑。私も作品をかいているのですが昔みた時のこの小説の印象が強くて。私の小説はピピコさんの小説に結構影響されてます。これからも頑張ってくださいね!素敵でした! (2018年4月6日 18時) (レス) id: 62fe788d65 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 神威いのちさん» 神威いのちさん!ありがとうございます!!5回も!!たくさん読んでくれて嬉しいです!こんなシーンが書きたいとかシーグラスを使ってみたいとか、そんな私の嗜好が詰まったお話でしたが、お楽しみ頂けたなら幸いです!読んで頂きありがとうございました! (2018年3月10日 15時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 月兎。さん» 月兎。さん!ありがとうございます!!わぁぁ探してくれたんですか…!初めて書いた神威さんのお話なので、すごく考え込んだんですけど、そう言って貰えるなら書いて良かったなぁと心から思いました!情景描写も頑張ったので嬉しいです!ありがとうございます! (2018年3月10日 15時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
神威いのち - むちゃくちゃ感動しました!何回見ても飽きません!因みに私、この作品5回くらい見たんですけど、何度見ても涙が止まりませんでした! (2018年3月10日 14時) (レス) id: 28f8b922b6 (このIDを非表示/違反報告)
月兎。(プロフ) - 思わずため息が出るほど素敵な作品でした。以前この作品を読んでもう一度読みたくて、探してまでここに来ました。語彙力ないのは許してください笑。一つ一つの表現が綺麗で、実際にそこにいるかのような文章でした。素敵です。最高でした!! (2018年3月1日 15時) (レス) id: 62fe788d65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年7月28日 21時