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色褪せないまま、 ページ41

Aside


……彼がここに来なくなってから、一年。いつもは一年なんてあっという間なような気がしていたけれど、彼に会えないこの一年は、とてもとても長く感じられた。彼とはあれから、一度も会えていない。それでも私は、淡い期待を胸に秘めて、毎日のようにこの場所に足を向けていた。


……そして今日も、私はこの海に来ていた。空には月や星が浮かんでいて、一人ぼっちの私を照らしつけていた。

…夏の夜の温度は、少し切ない。そんな気がした理由はない。けれど、そんなことの理由なんて、漠然としたことで事足りるだろう。そんなものに的確な理由を見つけることは、無駄に等しい。


……そんなことより、私がこんな夜に、この場所に行こうと思った理由を、私は知りたい。的確な理由を。


……いつもは朝や昼、夕方くらいに来るのに、今日は何故か、辺りが暗いこの時間がいいと思った。勘だった。特に何も考えず、私はここに来た。


……彼が、来るという予感があったのかもしれないし、もっと違った理由なのかもしれない。


「……今日も、会えないのかなぁ…」


……毎日のように繰り返す言葉。祈るように、願うように、私は呟いた。


……彼との思い出が、優しい記憶になっていく。夏の温度も、白い砂の熱さも、彼の瞳の色もあの日々の海の色も、彼の髪の色も夕焼けの色も、全てが私の中の優しい記憶になっていく。色褪せないまま、それでもそれは過去になっていく。


……それが堪らなく、悲しいのだ、私は。

だから、忘れないように私はいつも、彼に貰ったこのオレンジ色のシーグラスを手に握っている。彼との日々を、彼の色を、いつでも思い出せるように。


「……神威くん…、」


……一人、私は夜を見上げて、彼の名前を今日も小さく小さく呼んだ。その声は、波の音に混ざって、消えていく。


……今日も、彼からの返事はない。




威「ー・・・A、」

「……ッ、」


……とくん、と。


私の胸が跳ねて、身体が熱を帯びていく。優しい声に、私は目を見開いて振り向いた。



「……神威、くん…?」


……泣き出す寸前のような、そんな私のか弱い声が、その場に響いて、彼は微笑んで、私に手を伸ばした。


「……な、んで…?」

威「………約束、したでしょ?」




……必ずまた、君に会いに来るって。



ー・・・また、この場所で会おうって。


……私の頬に触れた彼の体温に、溶けてしまいそうだった。


……視界がぼやけて、滲んで、私は彼の存在を確かめるように、その胸に飛び込んだ。

また、この場所で→←見つけた



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設定タグ:銀魂 , 神威   
作品ジャンル:アニメ
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月兎。(プロフ) - ピピコさん» ふふ、今だにみに来てしまいます笑。私も作品をかいているのですが昔みた時のこの小説の印象が強くて。私の小説はピピコさんの小説に結構影響されてます。これからも頑張ってくださいね!素敵でした! (2018年4月6日 18時) (レス) id: 62fe788d65 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 神威いのちさん» 神威いのちさん!ありがとうございます!!5回も!!たくさん読んでくれて嬉しいです!こんなシーンが書きたいとかシーグラスを使ってみたいとか、そんな私の嗜好が詰まったお話でしたが、お楽しみ頂けたなら幸いです!読んで頂きありがとうございました! (2018年3月10日 15時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 月兎。さん» 月兎。さん!ありがとうございます!!わぁぁ探してくれたんですか…!初めて書いた神威さんのお話なので、すごく考え込んだんですけど、そう言って貰えるなら書いて良かったなぁと心から思いました!情景描写も頑張ったので嬉しいです!ありがとうございます! (2018年3月10日 15時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
神威いのち - むちゃくちゃ感動しました!何回見ても飽きません!因みに私、この作品5回くらい見たんですけど、何度見ても涙が止まりませんでした! (2018年3月10日 14時) (レス) id: 28f8b922b6 (このIDを非表示/違反報告)
月兎。(プロフ) - 思わずため息が出るほど素敵な作品でした。以前この作品を読んでもう一度読みたくて、探してまでここに来ました。語彙力ないのは許してください笑。一つ一つの表現が綺麗で、実際にそこにいるかのような文章でした。素敵です。最高でした!! (2018年3月1日 15時) (レス) id: 62fe788d65 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2017年7月28日 21時

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