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言おうと ページ36

…Aの背後には、茜色を反射させて輝く海と、あの日二人で夕焼けを眺めなテトラポットが見えた。そんな背景を背負い、Aはいつもと同じように、それでも何処か寂しげで、憂いを帯びたような笑みを浮かべている。

…海のさざなみの音が耳を優しくくすぐるように聞こえてくる。目を細めながら、俺はそんな彼女を見つめていた。何も言えないまま、何も出来ないまま。綺麗に笑う彼女に手を伸ばしたくても、うまくいかなくて、もどかしい。


「…今日地球から出るんでしょ?」

威「…うん、そうだね」


……と、やっとの思いで出た言葉は、言葉とも言えないようなものであった。何を話したらいいのか、言いたいことが山ほどあるはずなのに、音になってくれない。そんな俺を見て、Aは「……そっか」と目を伏せる。


「……どれくらい、ここに、地球には来れないの?」


…両手を背中で組んだAは、白い砂浜に視線を落として、自分の影を見つめるようにしてそう問いかけた。俺はそれに、「……分かんないけど、」と詰まりそうな声で言う。


威「……多分もう暫くは来られないよ」


……あぁ、なんでこんな突き放すような事しか言えないのだろうか。自分で自分に嫌気がさしてしまう。でも、いつまたここに来られるのか、地球に降り立つのか、実際にも分からないのだ。半年くらいかもしれないし、もっと時間が流れてからかもしれない。具体的な時間は分からないけれど、それでも、ここには居られなくなるという事実は変わらない。

俺の言葉に「……まぁ、そうだよね」と、無理をして弾ませたような声で言う。


「……じゃあ、もう会えないって可能性もあるんだね」

威「…ッ」



…そんなことないよ。


……俺は、何度だって君に会いに行くよ。


……そう言いたいのに、声が出ない。声の出し方が分からなくなったみたいに、喉の奥が縮こまったように、うまく声を出せなくて。何かを言いかけて開いた口は、情けなくも何も言わずに閉じていく。


……言おうと思ったのに。


……必ずまた君に会いに行くって。どれだけ時間が経とうと、ここにまた来るよって。


……好きだよって、言いたいのに。


威「……ごめん」


……また、そんな違う言葉しか、出せなくて。


不甲斐なくて苦しくて、俺は自分の足を睨みつけるようにうつ向いた。


…すると。

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設定タグ:銀魂 , 神威   
作品ジャンル:アニメ
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月兎。(プロフ) - ピピコさん» ふふ、今だにみに来てしまいます笑。私も作品をかいているのですが昔みた時のこの小説の印象が強くて。私の小説はピピコさんの小説に結構影響されてます。これからも頑張ってくださいね!素敵でした! (2018年4月6日 18時) (レス) id: 62fe788d65 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 神威いのちさん» 神威いのちさん!ありがとうございます!!5回も!!たくさん読んでくれて嬉しいです!こんなシーンが書きたいとかシーグラスを使ってみたいとか、そんな私の嗜好が詰まったお話でしたが、お楽しみ頂けたなら幸いです!読んで頂きありがとうございました! (2018年3月10日 15時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 月兎。さん» 月兎。さん!ありがとうございます!!わぁぁ探してくれたんですか…!初めて書いた神威さんのお話なので、すごく考え込んだんですけど、そう言って貰えるなら書いて良かったなぁと心から思いました!情景描写も頑張ったので嬉しいです!ありがとうございます! (2018年3月10日 15時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
神威いのち - むちゃくちゃ感動しました!何回見ても飽きません!因みに私、この作品5回くらい見たんですけど、何度見ても涙が止まりませんでした! (2018年3月10日 14時) (レス) id: 28f8b922b6 (このIDを非表示/違反報告)
月兎。(プロフ) - 思わずため息が出るほど素敵な作品でした。以前この作品を読んでもう一度読みたくて、探してまでここに来ました。語彙力ないのは許してください笑。一つ一つの表現が綺麗で、実際にそこにいるかのような文章でした。素敵です。最高でした!! (2018年3月1日 15時) (レス) id: 62fe788d65 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2017年7月28日 21時

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